①ではスポーツ観戦文化のなかった地方都市でのサッカー文化の普及が成功した話をしたが、②では翻って、本来ならスポーツ観戦文化のある大都会・東京でのプロスポーツチームが地元に根付いているのか?という話をしたい。
昨年(2016年)秋に筆者は地元のフットサルFリーグのチーム「フウガドールすみだ」の試合を見に行った。
このチームの本拠地は墨田区総合体育館。東東京のハブとなる重要な線路が交錯する錦糸町駅から歩いて3分の好立地。加えて、東京の人間はスポーツにお金を払って試合を見る文化もある。地方都市のスポーツファンからすれば、全てが整っているような恵まれた環境に見える。
…ところが…
先日見たフウガドールの試合にお客様はほとんどいなかった。2000から3000人は収容できる客席にも集まった観客はわずか830人。この体育館の近くにある人気ゲーム・ポケモンGOの重要スポットには、スマホを持ったゲーマーが、錦糸町駅近辺に画面とにらめっこしながらたむろしてしていたのに、地元のプロスポーツチームには観客は集まっていなかった。
この時のフウガドールはFリーグで12チーム中3位。プレーオフも射程に入れた強豪である。
しかし、いくら強くても地元住民との絆は残念ながら構築できていなかった。
他のスポーツでも東京のファンがお金を払って、地元チームの試合を見ていないことは分かる。
プロバスケット統一リーグ・Bリーグでも渋谷区表参道にあるサンロッカーズ渋谷も代々木第二体育館のアルバルク東京も1部リーグの平均観客数の2750人を下回る動員数しか集められていない(両チーム2000人強)。
アルバルクは開幕戦で地上波テレビで世界一の美人姉妹・広瀬アリス&すずが興奮しながら、そのチームのプレーを実況していたチームだし、サンロッカーズもプレーオフ圏内の力のあるチームだ。
しかし、そうしたチームでも地域住民と一体化したプロスポーツクラブなのかというと答えは「NO」である。
お金を払ってプロスポーツを見る文化のある東京でも、人口の動きはむしろ流動的で、そうした中で固定客のファンを囲うのは、地方都市のプロスポーツチームとはまた違った難しさがある。
ただ結局のところ大都市でも地方都市でも集客するには、地域のメディアにたくさん顔を出して、地元の学校や老人ホームと言った施設をコツコツ回るような地味な活動を辛抱強くこなす必要がある。
リーグの勝敗もプロスポーツが根付くには必要なファクターだが、十分ではない。そのチームの本拠地がある商圏が広かろうが狭かろうが、試合に勝つための練習と地域に顔を売る地味な活動が、車両の両輪として噛み合っていかないと地元に根を張ったチームにはならないのである。星の色だけ気にしたスポーツビジネスでは本当のプロスポーツチームではないのである。