①では野球の試合でも国内リーグと国際大会では微妙に規則が違い、その違いが国際大会における理想の投手像を形作る根拠となる、という話をした。②ではその根拠の理由を説明したい。
野球の投手における最も格好いいアウトの奪い方というのは色々議論されるだろうが、個人的には三振だと筆者は考える。
三振でアウトを取るということは1人の打者に対して、最低でも3球を投げなければならないのは当然である。
そして一試合に必要なアウトは9イニング×3アウトだから27個のアウト。そして27個のアウトに最低3球は必要なので81球は必要になるという計算である。
しかし、三振を取らずに打たせてアウトを取ることを考えるならば極論を言えば1人の打者に1球を投げれば十分である。27個のアウトを取るには27球でOKになる。
もちろん、筆者もこの定義が頭の悪い妄想で究極的な極論であり、現実にはこんな試合はあり得ないことくらいは分かっている。
筆者が言いたいのは、投げられる球数が無制限な国内リーグでは3ボール2ストライクになるようなノーコンの速球派投手でも構わない。
しかし、どんな投手でも1人当たり投げられる球数が制限されるWBCのような国際大会では一度の投球も無駄に出来ない。見せ球や釣り球以外のボール球も、投球の1つとしてカウントされるルールである。だから無理に三振を取ることよりも、限られた球数制限という制約の中で、少ない球数で効率よくアウトを取るのをベストとし、打者の打ち気を利用してかわしたりはぐらかすようなピッチングで打たせて取るような制球力を擁する技巧派投手の方が、こうしたルールでは相性がいいのだと言いたい。
この筆者の持論に異論がある野球ファンは当然いるだろう。しかし、個人的には国際大会に限定すれば、理想の投球というのは三振ではなくこうして打たせて取るのが究極的なゴールに見えるのだ。
三振を取るには3球が必要だが、打たせて取るなら仮に走者が出ても、1球でWプレーで2アウト取れる可能性もある。球数制限がある中で1人の投手に長いイニング投げさせたいなら、そうしたアウトの取り方が理想だと言いたいのである。
だから、仮に自分がプロ野球チームの編成局長でドラフト会議で、球団からは7人支配下選手を指名できて、6人は指名済み。最後の1人は高卒の投手が欲しいとする。
そうした時に2人の投手がリストアップされていて、1人はノーコンだけど三振が取れる速球派投手である。一方で、もう1人は速球は並だが、変化球と低めへの制球力が高い技巧派なら、編成局長の自分なら球数が多くなるフルハウスピッチャーよりも一球でアウトの取れる後者の技巧派を獲る。
これは正解不正解というよりも、個人の価値観の問題である。しかし、こうした野球ファン1人1人の価値観の構築が文化として形作られていくものなのである。