三が日からいきなり、暗い話題で申し訳ないが、昨年(2016年)は日本人の労働システムに対して、エポック的な分岐点になった年であった。
年末に再三ニュースになっていたので知っている人も多いだろうが、東大から電通に入社した女子社員である高橋まつりさんが2015年年末に長時間労働のような過酷な労働体系に精神的な健康を破壊されて自殺に追い込まれたのだ(享年24)。
正直にこのニュースを見て、これからの時代、2017年以降の労働に対する1つのターニングポイントになると筆者は考えた。
これまでの日本の労働体系は「残業=働き者」「雇用契約を結んだ社員は身体を壊すまで徹底的に使い潰して、雇うメリットがなくなったら捨ててもいい」「プロの世界は何事も結果が全てで、なおかつバレない反則は反則ではないから、そういう若手社員の処遇に対して何をやってもいい」、といった日本企業の経営者に若者に対する暗黙の了解のようなモノがあった。
しかし、今回の若い女子社員に対する最も悲しい結末を迎えて、日本全体に大きなショックを与えた。
その上にこの少子化である。第2次ベビーブームの1973年には約209万人生まれた赤ん坊が、筆者の生まれた1978年には170万人、1995年には121万人、出生率が1.26まで落ちた2005年には105万人、2014・2015年には各100万人で、とうとう昨年(2016年)は98万人と大台を割ってしまった。
正直この本来ならスポーツと関係ないジャンルのニュースをなぜ引っ張り出したかと言えば、こうした若者を搾取する構図というのが、スポーツチームの顧問や監督、学校の理事会(電通)とそこに所属する選手(高橋まつりさん)の構図に似ているからだ。そしてそうした若者という弱者が数の上でも少数派という事実である。
一昔前の大阪のバスケ部員が顧問の体罰を苦に自殺して、それまで「体罰=指導者の厳しさが含まれた愛情」だったのが、この時を境に「体罰=絶対的な悪」と180°方向転換した。
翻って今回のタイトルにある4回戦ボクサーである。こうした若手アスリートもまた、一部の成長株を除き、一般のボクサーもまた搾取されている構図なのだ。〈②に続く〉