①ではサッカークラブにとって、名門料理店の秘伝のたれのように最も大切なチームの伝統(スタイル)というのが、親会社から出向で来たサラリーマンのフロントによってあっさり壊されてしまうという話をしたが、彼らが更にタチの悪いのはそうした後生大事に育てたチームのスタイルを、自動販売機のジュースのように小銭を入れてボタンを押せば出てくるような簡単に構築できるモノだと錯覚している部分にある。
そうしたトヨタのような企業社会での権謀術数だけで生きてきたサラリーマンが、グランパスのような出向先のサッカークラブでチームの伝統が自動車部品のように簡単に品質管理できるのか?と錯覚してしまう話である。カイゼンで世界に名を轟かすトヨタもお膝元にある子会社のサッカークラブのフロントにはチーム運営をカイゼンはできていなかったようだが…。
そうした錯覚の原因は①で述べたようにインターネットの存在が大きい。
1995年に生まれたインターネット(windows95)は周知の通り、それまでの社会の新聞やテレビといったマスコミュニケーションに依存した情報伝達のプロセスを圧倒的な力で破壊し、「IT革命」と呼ぶに相応しい一瞬での情報や意思を伝達することを可能にした。
…ところが…
どんな発明にも功罪はある。それまで時間をかけてモノを構築するというのが常識だったのが、インターネットの出現によって簡単に瞬時に物事の構築や意思疏通ができて当たり前になり、そうした即時に完成すればいいし物事のプロセスが短ければ短いほどいいという安易な発想に現代人の思考は変化した(余談だが、そしてそれが結果さえ残せればどんな汚い手を使ってもいいという悪しき結果至上主義にも繋がった)。
しかし、①でも言ったことだが強くて面白く楽しいサッカーができるチームというのは一朝一夕ではできない。時間も手間暇もかかる。よく考えれば当たり前のことだ。
しかし、ネットによるお手軽な結果至上主義というのが、そんな当たり前な道理も分からなくしてしまうのである。世界一の自動車メーカー・トヨタの社員だったフロントでさえである。
今年(2017年)の名古屋グランパスのJ2という泥沼でどんな走りをするかは分からない。テスト走行したことのないぶっつけ本番の泥の中での走りである。
しかし、いくら天下のトヨタでもものづくりの原点に帰ったチーム作りには時間がかかるという謙虚な心がないと、J2という泥沼でのレースでチェッカーフラッグはきれないということだけはJ2の8年目クラブのサポーターから先輩として助言しておく。降格後の自軍選手や他のJ2クラブに礼節を欠いた言動をしたフロントのクラブ作りが見ものである。