①では欧州社会というのは歴史的な部分から紐解く(ひもとく)と宗教的な対立が濃い社会で、そのエネルギーの濃さがサッカーのダービーに繋がっているという話をしたが、②では米国と日本の話をしたい。
筆者のブログでは出番は少ないが、米国で人気なスポーツでアメフトがある。そしてアメフトの最高峰が言わずもがなNFLである。
そんなNFL。スポーツの現金化(現金収入の回収率)が高いアメリカのスポーツの中でもNFLは抜きん出て高い。
そうした回収率の高さを上げるために「ブラックアウト」というルールがある。
ブラックアウトとはNFLのスタジアムが満員にならないと試合中継を打ち切ることを許可するシステムのことである。これによって来場者を増やす狙いがある。
しかし、実際のNFLでは空席もあるという。この矛盾はなぜだ?
それはNFL球団の金持ち個人オーナーが売れ残りのチケットを自腹で買い取り、ブラックアウトを回避させているのである。
この時オーナーは「企業にとって大事なのは利益だが、個人にとって大事なのは名誉である」と答えた。こうした米国には個人主義の考え方があり、何より大事なのは個人の名誉(面子)なのである。
最後に日本である。もう答えは出ているが、日本は企業社会であり、企業にとっての最優先事項は当然利益である。それ自体は本来悪いことではない。
しかし、そうした思考が日本のプロスポーツに不幸を招いた歴史がある。
Jリーグが発足したオリジナル10の1つだった横浜フリューゲルスは親会社の全日空が、サッカーバブルのはじけた現在では利益にならないとフリューゲルスというクラブの経営から1998年に撤退し、宿敵マリノスと合併してしまった。
欧州ならこんなことはありえないし、米国ならオーナーが身銭を切って支えるか、プロサッカーチームのない自治体へ移転するかだろう。
しかし、日本社会は企業社会。企業にとって大事なのは信仰でも名誉でもなく利益。だからこんな悲劇が生まれた。
今日本のスポーツが迷走しながらも過渡期に突入しているが、欧州や米国の表面的なところだけ見てパクるのではなく、自分のクラブを継続させるには本質的な部分を追求する努力が必要なのである。