①ではサッカーの応援における粋という概念について、ロック総統の言葉から引用してきた訳だが、②では野球・独立リーグでの粋な部分を見ていきたい。
先日読んだ 「地域に根づくもう一つのプロ野球」(岡田浩人著・ベースボールマガジン社・2014年)でルートインBCリーグ(北信越リーグ)の群馬ダイヤモンドペガサス(現DeNA監督のラミレスが在籍した球団)のスポンサーをしている地元企業・山田製作所という企業があった。
そこの若手社員でアメリカのスポーツビジネスに憧れてマイナーリーグのボランティアをやっていた人が、帰国後に就職して自分の会社が独立リーグのスポンサーになることになり、その話に飛びついた。
この山田製作所という会社は自動車部品では群馬でも大手企業で業界内では有名であったが、エンドユーザー向けのビジネスではないので一般的な知名度はゼロの誰にも知られていない企業であった。
しかし、山田製作所の社員はペガサスのマッチデープログラムにこんな提案をした。
「電機でも、うどんでもないYAMADAデー」
ヤマダ電機は有名だから説明不要だろうが、山田うどんには補足説明する。山田うどんとは埼玉や群馬など関東山間部で店舗数を拡大しているローカル和食チェーン店で、ライターの北尾トロが山田うどんを「カロリーのK点越え」と絶賛(?)するくらいの大盛りのうどんが食べられる地元では知名度の高い店である。
山田製作所の社員はそんな自社の知名度の低さを自虐的に逆手に取って、クスッと笑えるアイデアを出した。
最終的にこのアイデアは2つの企業からのクレームを恐れて却下になったが、個人的には野球の世界だけど山田製作所にはオフサイドラインのギリギリの部分まで攻めてもらいたかった。こうした考えというのが①のサッカーのロック総統が言う「粋」な応援(広告)である。
逆に言えば、野球という世界は80年の歴史があるから、こうしたユーモアのあるアイデアというのが生まれるのかもしれない。こうした「粋」な部分がプロスポーツの文化を熟成させていく。