①では寒冷地でのスポーツ文化の普及を見てきたが、地域の特性を生かしたスポーツ文化というのは何も寒冷地だけでなく、温暖な地域でも可能だ。
昔プロ野球(NPB)では秋季キャンプになると、その温暖な気候を生かして阪神などが高知県安芸市などでキャンプを張った。
時代は21世紀に入った2013年11月に、同じ四国に生まれた野球の独立リーグ・四国アイランドリーグ(四国IL)が高知県土佐清水市でウィンターリーグを開催した。ウィンターリーグとは野球のシーズンオフの時期に、様々なリーグのチームが集まった合同練習や練習試合のことである。
このウィンターリーグにはアメリカやドミニカ共和国と言った「本場」はもちろんのこと、スペインやフランス・オーストリアと言った国からも参加者がいて、NPBや独立リーグ・アメリカのメジャーや日本の社会人チームからのスカウトも集まり、野球のShowcase(見本市)のようになった。
そうした上で1人あたり2週間で21万円の参加費で、四国IL以外で自分の意思で来た27人の参加者がいたことから、参加費だけで600万円近くにも上り、四国ILのウィンターリーグは初年度から黒字化に成功した。この成功は高知(四国)の温暖な気候だからこそ上手くいったアイデアの勝利だ。
こうした温暖な気候を生かしたスポーツ文化は他にもある。筆者の地元である千葉県で外房(「そとぼう」と読む・千葉県の太平洋岸地域のこと)の私立高校で「サーフィン部」という部活動があった。
最初この部活動を聞いた時は驚いた。「サーフィンが部活動として成立するのか?」と正直思った。
しかし、よくよく考えてみるとサーフィンを部活動にするのは「アリ」である。最近はどこの学校も高校サッカーなどメジャーな競技に力を入れる学校が増えたが、こうした競技に力を入れるのは「コモディティ化(皆と同じ努力をしているので、自分の仕事が安い値段で買い叩かれること)」してしまう。
しかし、こうしたこの学校のように、関東有数のサーフィンのメッカという地域の特色を生かしたスポーツ文化というのは、努力の費用対効果も高く、注目もされやすい。
今回は地域の特性を生かしたスポーツ文化を紹介したが、このブログを読んでいる地方の読者の方々も、自分の地元には何もないと思わずに「あるモノ探し」からスポーツ文化を熟成させるのが、意外と成功の近道かもしれない。
参考文献 牛を飼う球団 喜瀬雅則 小学館 2016年