①では日本におけるプロチームを運営することと地方経済の現在について掘り下げていったが、②でももう少し考えていきたい。
このブログによく出てくるプロサッカー漫画家の能田達規の作品「マネーフットボール」で、主人公の右SBの梶本洋平が所属する2部リーグの愛媛イーカッスルの作中におけるクラブの年間予算は10億円という設定だ。しかし能田氏本人の言葉だと現実の世界にあるJ2愛媛FCの予算は5億円だけでJ2の平均予算以下だと言うことを教えてくれた(それでプレーオフ進出は凄い)。
そんな愛媛には野球の独立リーグである愛媛マンダリンパイレーツや他のスポーツチームもあって、こうしたチームのスポンサー獲得のための営業マンはただでさえ商圏の狭い自治体で、スポンサーの奪い合いになっていくのは自明の理だ。
「他のスポーツ」と述べたが、愛媛にはヒートデビルスというbjリーグのチームもあるが、これは海を挟んだ大分県とのダブルフランチャイズ制である。
同じダブルフランチャイズでもアイスホッケーの東北フリーブレイズのように「東北全体」を本拠地にするならともかく(フリーブレイズは予算8億円)、大分と愛媛のダブルフランチャイズで、地域の人は地元愛と言う名のチームに対するアイデンティティーをヒートデビルスに植えつけられるのか?という疑問もある。
もともとこのチームは大分の方にアイデンティティーの軸足を移しているようだが、地方さえ違う愛媛県にはどういう感覚なのかはわからない。
このチームを見て思ったのは、今の日本の地方自治体というのは、それほど多くのプロチームを抱えるのは財政の面で不可能だと言うことである。
bjリーグのサラリーキャップ(チーム内における選手全員の年俸総額の最低保証ライン)は平均額で約1億5000万円で、独立リーグの四国アイランドリーグの年間予算も約1億円。
我々のような一般市民にとっては大金だが、プロスポーツチームの運営には全然予算が足りないのである。
そうした中で愛媛県の場合、J2クラブ(5億円)と独立リーグ球団(1億円)を養うだけで手一杯なのだ。
東京のような大都市圏ではスポンサー集めのチャンスは山のように転がっているが、地方都市だとフロントの営業マンも強烈にタフな闘いを強いられる。
今回は久しぶりに王道のスポーツビジネスネタを直球勝負で書いたが、このテーマはまたもっと深く追求したい問題である。
追伸 ヒートデビルスのダブルフランチャイズ制は大分から愛媛にチームを移譲するための暫定的処置であった。2016年8月22日現在・愛媛のプロバスケチームは愛媛オレンジバイキングスとなった。
しかし、Jリーグでもアビスパ福岡が静岡の藤枝ブルックス、サガン鳥栖が浜松市のPJMフューチャーズからの国替えでできたチームで地元で外様だった時代もあったことから、オレンジバイキングスもJリーグより知名度の低いプロバスケの地元への浸透は困難を極めるだろう。