ここまでスポーツビジネスとの関連性が薄い記事を書き連ねたが、とりあえず最後の④である。

では、③で述べた「若者の価値観を老人世代が否定したら、損をするのは実は老人」とはどういう意味か?

野球を含めたスポーツビジネスが日本で産声を上げたのが1993年のJリーグ開幕の頃だとすれば、お笑いや音楽がショービジネスとして特化したのは、1982年にコント赤信号の渡辺正行が渋谷の道玄坂の上にライブハウス「La.mama」を作ったのが始まりである。

それまではお笑い芸人は鈴本演芸場のような限られた舞台しか自分の芸を披露するしかなく、ミュージシャンもまた人前で歌を披露できる場はほとんどなかった。

しかし、そんな時にLa.mamaという無名の芸人やバンドが人前で芸(歌)を見せられるようになり、お笑いも音楽もそこから10年間で急激なパイの拡大に繋がった。そして1990年代のお笑いブームや当時の言葉で言うJ-POPの爆発的な文化の拡散も引き起こした。

そんな中で急激なパイの拡大は新たな雇用や産業の創出に繋がった。それまで歌やお笑いを披露する場がなかったのが、ライブハウスという受け皿の出現により「ライブハウス経営」などと言った新たな雇用に繋がり、それが若い世代の現金収入になり、彼らのような若い夢追い人にも結婚し、一定の税金や年金の支払いが可能になった。そうしてそうした金が老人の安心を支えている。

野球を含めたスポーツビジネスも同様だ。野球人も音楽人も表現手段は異なれど、夢という名の最終目標は「東京ドーム」なのは間違いない。

しかし99%のミュージシャンがそこに届かず「地元のライブハウス」で音楽を諦めるように、ほとんどの野球選手は「(独立リーグやアマ球界がある)地元の市営球場」で終着点としてその夢の寿命を全うする。

しかし、野球の独立リーグやサッカーのような他のスポーツチームの出現により、そうした競技のパイが拡大し、そこで働く人が増えて、夢を追う若者にも安定した現金収入が得られるようになる。

ショービジネスとしての音楽やお笑いは、野球のようなスポーツビジネスの兄貴分に当たる。もしかしたら今の音楽やお笑いビジネスというのは、独立リーグのようなジャンルにとって10年後の自分たちの姿かもしれない。

こうした娯楽の世界で生きることを老人が「現実逃避だ。くだらん」と、古い考え方だけで否定するのは、日本全体の産業の縮小を招き、そして当然それは税収や年金の支払いの悪化も引き起こす。

老人世代はいつの時代も新しい価値観に対して保守的になって否定から入るモノだが、彼らの価値観に柔軟に対応して寛容になることにより、巡り巡って自分たちの老後の安心に繋がるということを伝えておきたい。