筆者がスポーツビジネスというジャンルにおいて、挨拶回りも練習や試合に匹敵する仕事だ、と感じたのは曽田正人のF1漫画「capeta」を読んだ時だった。

主人公のライバルでレーサーのエリートである源奈臣がF1の下部カテゴリーであるカート競技のレースで優勝した時に、自分のレースのスポンサーをしてくれている自動車部品会社の社長に挨拶回りに行って、レースが終了した夜に徹夜で分析したレースの反省材料の資料を持参して、翌日優勝報告をしに行った。

社長との挨拶が終了し源を見送った社長の部下が、「レース終了直後に徹夜で反省会をして、次の日に挨拶回り。そこまでしなくても」と言ったら、社長は「黙れっ!」と一喝した。

「俺はあいつ(源)に1000万円払っている。普通のレーサーの3倍の金額だ。なぜならあいつは絶対勝つとか頑張りますとかは言わない。冷静にレースを分析して、自分自身を観察して客観視して『こいつ(源自身)が勝ちます』と俺に説明する」

「人の金でレースするというのはそういうことだ。『金がねぇ』とか『スポンサーがいねえ』とかほざくレーサーは山ほどいるが、俺に言わせれば『受け取る資格があるレーサーが少なすぎる』だけだ」

この流れを見てスポーツというのは1人で戦っているモノではない、ということが分かった。

自分1人で戦っていると思っているうちはまだ半人前。この場合はレースだが、スポンサー様からのサポートがあって充実した環境が生まれるということを自覚出来なければ、本当の意味でのプロではない。

自分もボクシングを見ていて思ったのだが、試合の時に渡されるパンフレットの中にあるおそらく広告効果が無に等しいコマーシャルも、スポンサーの1人1人の若者へのサポートの表れである。

源も「レースはコース上だけが全てではない」と言っていたが、実際に練習や試合以外の部分でどれだけ汗をかけるかが、成功と失敗の分かれ目になる。