①ではどちらかというと少し特殊なスポーツにおける、戦い方の流行り廃りを紹介してきた訳だが、②ではメジャーな競技での戦い方の流行り廃りについて見ていきたい。
戦い方のトレンドという意味で外せないのはやはりサッカーである。W杯や五輪のようなサッカー選手の見本市のような試合の上に、世界中で週末にどこかの国でサッカー選手たちはボールを蹴っている。
日本でも、ただW杯に出られれば良かった1990年代を通過して、W杯での勝利を望むようになった21世紀に入って、この国にも「戦術」という概念が市民権を得るようになった。
2002年の日韓大会の頃になると当時の日本代表監督であるフィリップ・トルシエが提唱した「フラット3」という、3バックの3人が横並びで戦う形の戦術が、世界のサッカーの主流になった。
しかし、それで日本代表が勝てていた時代もあったが、偵察(スカウティング)部隊というサッカーの分析専門集団によって丸裸にされたフラット3も後に攻略法が発見され、あっという間に廃れてしまった。
その後もしばらくは3バックが主流だったが、筆者がサッカーを見始めた2000年代後半にはJでは完全に4バックのチームがほとんどだった。
その4バック全盛の時期もあったが、日本だと広島から浦和に行ったミハイロ・ペトロヴィッチが3-6-1を採用したこともあり、Jでも3バックを取り入れるチームも少しずつ復活してきた。
同じことは野球にも言える。野球の変化球もまずはカーブだけだったのが、カーブから派生した肘に負担のかからないスライダーが全盛の時代になったこともあり、その一方で肩や肘を消耗するフォークボールも一時期敬遠されていたが、野茂英雄がメジャーで勝ちまくったら、人気復活した変化球もある。
また「シュートは肘を壊す」という迷信もあって、シュートはフォーク以上に敬遠された時期も長くあったが、野村克也監督がシュートの使い手だった西本聖に、シュートし肘を壊さないと聞いてから、野村門下生を中心にシュートも見直されるようになった。
こうして色々なスポーツで時代を彩る戦い方のトレンドを見てきたが、全ての競技に共通するのが「未来永劫、永遠に続く勝ちパターンはない」というところである。また勝てば何でもいいというのではなく、どんな競技でも戦い方に勝利のための哲学というのが、それぞれの戦い方にこびりついて選手や監督のアイデンティティーになっているのも興味深かった。
人に歴史あり、とよくいうが、戦術にも関係者の想いや歴史が刻まれているのである。