①では近年スポーツ界で進む現金化の流れから、戦力の均衡が進んでいて五輪競技の場合、その均衡の原因の1つにYouTubeの普及があるという話をした。
ではYouTubeの爆発的な普及と五輪競技の戦力均衡の因果関係を考えていきたい。
YouTubeが生まれた2006年よりも前の時期は何の世界でもいわゆる「お宝映像」を持っている映像マニアというのが、どの競技にもいた。
筆者が好きだったボクシングでも、ボクシングヲタの香川照之が、専門誌で南米アルゼンチンの国内タイトルの映像を紹介していた。
もちろんサッカーでも昔のトヨタカップのマニア映像を持っているレストランの老店主に見せてもらったこともある。
こうした映像というのは格闘技でも球技でも、一部のコアなマニアしか見られなかった。
しかし、2006年頃のYouTubeが映像の価値を一変させた。映像を取引できるのはメディアの業界人とマニアだけの既得権益だったのが、パソコンを持っているだけの素人でも何の障壁もなく取引できるようになった。
こうしたYouTubeの爆発的な普及というのは、今までだったら弱小国だったところでも、強豪国の試合の動画が簡単に手に入り、スカウティング(偵察調査)の労力が驚くほど手軽になった。
そうした弱小国が強豪国対策を練って、試合での練習相手に自分たちのゲームプランを構築した上での分析や試合への対策が、YouTubeによって強豪国を丸裸にできたことにより、急速にレベルアップが可能になった。そして「このゲームプランで駄目だったら仕方ない」という開き直りも可能になった。
ここは憶測だがそれまでマイナーだったフェンシングやアマチュアボクシングでメダルが獲得できたのも、水球が32年ぶりに五輪行きの切符を手にできたのも、YouTubeによってスカウティングの幅が格段に広がったからだと、筆者は推測する。
もちろんどんな競技でも選手の頑張りがあってのことというのは分かるが、ただむやみに頑張るのではなく、努力の方向性を位置付けするプランニングがYouTubeが出る前はできなかった。
しかし、今は強豪の映像が地球の反対側の映像も一瞬で手に入る時代。いい時代になったものである。