①では独立リーグの運営というのが、ある種生存率の低いベンチャー企業並の激烈にタフな環境で行われていることを述べたが、②ではそうした中でアトランティックリーグが、いかに集客に成功しているかを述べたい。
まずアメリカにおいて、独立リーグの存在意義というモノについて考えてみたいが、MLBの場合だと球団がフランチャイズとして指定している区域には、競合する球団が(マイナー球団含めて)置けない。共食いになってしまうからだ。リーグ運営の基本中の基本である。
しかし、MLBとの関係性がない独立リーグではMLB球団のフランチャイズ指定区域内にも球団を置くことが可能だ。
もちろん、使いきれないくらいの金を持つMLBと運営費すらこと欠く独立リーグでは、レベルの差はいわずもがなである。
ではなぜ、アトランティックリーグはそんな独立リーグでも高い収益率を上げられるのか?
それは、NY近郊という立地の良さでの集客力に加えて、MLB球団との契約で合意に至らなかったメジャーや3Aクラスのプレーヤーが、契約がまとまるまではいわば「仮住まい」としてアトランティックリーグを利用しているのである。
MLBでは春季キャンプでのいわゆるロースターと呼ばれるメジャー契約40人枠から漏れて、マイナー契約してしまうとその球団でしかプレー出来なくなる。それを嫌う意味で契約がまとまらなかった一流選手は、MLBとの縛りがない独立リーグを選ぶ。日本でもメジャー帰りの藤川球児がNPBとの契約が折り合わなかった時期に、独立リーグの四国IL・高知ファイティングドッグスに入団したこともあったが、からくりとしては同じである。
メジャークラスの選手がプレーすれば、おのずと高い競技レベルがリーグ内で維持される。「全て最高のものは、その個別の領域を超える」というゲーテの言葉があるが、メジャークラスの最高級のプレーが安い独立リーグのチケット代(1ドル!)で見られたら、野球を知らない素人も野球の魅力を知ってリピーターになってもらえる。
そうした自前の潜在能力を活かしたリーグ運営でアトランティックリーグは2011年には1試合平均4054人の集客を叩き出し、下手な3Aよりも稼げるリーグを作りあげた。
球場もリーグ随一の人気球団ロングアイランド・ダックスのニューヨーク州サフォーク郡はヤンキースとメッツのフランチャイズ指定区域に選定されるが、サフォーク郡が独立リーグで街おこしという意味で、2200万ドルを出資して新球場を2000年に設立した。
今回はアメリカの野球・独立リーグについて述べたが、次は実際に現地の独立リーグの球場に行ってレポートを書くのが夢(妄想?)である。
参考文献 Sport Management Review 2007 vol.6 いまこそ「スモールリーグ」に学べ!
ヤンキースのユニフォームにはなぜ選手の名前がないのか? 鈴木友也 日経BP社 2014年
もうひとつのプロ野球 若者を誘引する「プロスポーツ」という装置 石原豊一 白水社 2015年