②では筆者が先日トウタイ(千駄ヶ谷の東京体育館)で見た卓球について色々述べたが、まだ書き足りないのでもう少し書き足すことにした。
卓球という競技が打撃系格闘技同様にマス(スペース)の奪い合い、空間の争奪競技というのは前回述べたが、卓球とボクシング(もしくは剣道)などとの決定的な違いは何か?という話である。
それは争われる空間の形の違いである。筆者がやっていたボクシングや昨年筆者が体験講座を受けたフェンシング、また日本では競技者人口の多い格闘技である剣道などは基本的に「タテ」の直線的なスペースの取り合いなのに対し、卓球のスペースというのは「ヨコ」のワイドな幅を広く使った上でのスペースの奪い合いになる。どちらかの競技の特徴に優劣がある訳ではなく、競技上の個性の違いである。
筆者のボクシングネタに脱線して申し訳ないが、卓球のスペースの取り方を巧みに打撃勘に組み込んで世界王者になったボクサーで、長谷川穂積という選手がいる。
長谷川は中学時代に卓球部に所属していて、(後のトップアスリートだから当然だが)横の幅を使った反射神経の反応速度は相当なモノだったらしい。それはスタンスの両サイドの幅を意識させたフェイントとアジリティーで相手ボクサーを撹乱(かくらん)させ、世界最高峰のリングでKOの山を築いた。そのフットワーク技術の中には中学生時代の卓球経験という(ボクサーにしてみると)意外な競技が土台になっていた。
脱線して申し訳ない。話を卓球に戻す。卓球という競技は打撃系格闘技のような強烈なフィジカルコンタクトがあるスポーツではないので、全く接点がないとややもすると軽く見る人もいるが、サイドの動きを意識した瞬発力を競い合う競技としては、卓球は実はかなり奥の深い競技なのである。〈④に続く〉
