①では筆者が応援するJ2ジェフ千葉から天才ドリブラーの話をしたが、②では20年来見てきたプロボクシングでの天才について考えていきたい。

筆者が今まで見てきた天才で3本の指に入る天才の1人に、元WBAスーパーバンタム級王者の下田昭文(帝拳)がいる。

日本一の名門ジムでアマエリートが山ほどいる帝拳拳士の中で、下田は珍しく一般練習生からの生え抜きだ。

しかし本来なら注目されない練習生でも下田の身体能力は目を見張るモノがあった。

下田の長所はそのハンドスピード。「左の辰吉」と呼ばれるその超絶高速スピードは後楽園ホールで見てても、全く追いつけない速さだ。

しかし天才にありがちな練習嫌いな一面もあり、格下相手の不用意は苦戦があったのも事実だ。

そんな下田も国内選手と行われた世界タイトルマッチで、その圧倒的なスピード差で世界王者から3度のダウンを奪う快勝で、世界のベルトを掴みとった。

…ところが… 

アメリカで行った初防衛で格下相手にスピード差で圧倒しつつ、不用意なパンチを喰ってまさかのKO負け。

その後中国マカオでの世界ランカーとのサバイバルマッチでも、ポイントリードしながら逆転KO負け。

①でもヤザのことで述べたが、天才というのは前述の練習嫌いに加えて、ムラっ気もあってプロとは思えない考えられない凡ミスもある。自分は凡人だから全く理解できないが、あの気持ちの入れ方に対するムラは何なんだ?と不思議でしょうがない。

昔の言葉に「策士、策に溺れる」という言葉があるが、ヤザもそうだが下田も策ではなくその超絶的な身体能力に、肉体派エリートの天才は溺れてしまう傾向がある。いわば「天才、その才能に溺れる」だ。

ただヤザにしても下田にしても、その素質そのものはファンに愛されるに値するだけのパフォーマンスはある。

それだけにその才能を正しく使いこなせず、持て余す姿がなお一層悲しいのである。
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