今回はレスリング天皇杯のことを書いているが、試合についてもっと見ていきたい。

会場は基本的に入場料無料のアマチュアの格闘技なので「興行」というより「競技会」という雰囲気だった。

普段見るスポーツより選手と観客の距離が密接な会場だったが、いきなりスキンヘッドの男子の選手が目の前に出てきたのにはびっくりした。

おそらくその選手は(汗の出ない冬場の試合ということもあって)減量がキツかったのだろう。10キロ以上減量したのか、体のわずかな重さに過ぎない体毛を剃ってまでして計量をパスした。

その選手は過酷な減量でスタミナ面のビハインド(おそらく絶食した)を懸念されたが、試合を見たらフィジカル面のアドバンテージが活きて、(相手の身体を持ち上げてぶん投げる)大技の俵返しを極めて上位進出を果たした。

そして対戦表を見ると五輪3連覇で「霊長類最強の女」こと吉田沙保里の名前があった。

所属している会社の応援団の声援を受けてマットに上がる女王。

筆者は吉田沙保里のプレースタイルは知らなかったがもっと俵返しや飛行機投げと言った大技がメインの選手かと思っていたが、詰将棋にように淡々とポイントを稼ぐレスリングで相手に1ポイントも与えない完封で筆者が見た試合では勝利を収めた。

あとレスリングを見ていて面白かったのは、赤・青両コーナーが試合の判定に(1回だけ)異議を唱えることができることである。同じ格闘技でも相撲だと物言いで軍配刺し違えになって、審判団に抗議する力士はいないが、レスリングの場合だと西洋の社会において意見を言うという権利の主張というのが、スポーツにも認められているのがこうした場面でも分かるのが、競技とは別の意味で興味深かった。

今年(2016年)はリオ五輪がある。この日のマットで活躍したレスラーがどれだけ世界を相手に暴れることができるのか楽しみだ。

{08B996ED-ABE3-4315-8880-AEA52E832317:01}