①ではグランドスラム観戦と言いながら、今の柔道の状況を述べるのに終始していたが、②では実際に試合に言及していきたい。
筆者が見たのは2日目の男子73キロ級・81キロ級・女子63キロ級・70キロ級の試合だった。
この日の試合で印象に残ったのは、男子73キロ級の選手だった。
まず会場で目についたのはジョージア(グルジア)の選手であるヌグザリ・タタラシビリ。
ジョージアは元ラグビー日本代表ヘッドコーチのエディ・ジョーンズにして「ジョージアは他の国からレスリング留学するくらいレスラーの質が高い。(ラグビーの試合でも)彼らと組み合わない方が良い」と言わしめるほどレスリング熱の高い国だ。
そんな国の柔道代表になったタタラシビリ。組み手は左でジョージア特有の身体全体の力があった。その身体のパワーやフィジカルの強さは同じジョージア出身の幕内力士の栃ノ心や臥牙丸を彷彿(ほうふつ)とさせる。
そうしたタタラシビリの得意技は大外刈り。上半身であおっておいて少し強引でも、力で足を刈っていく大外が印象的だった。
もう一人印象的だったのが韓国のアン・チャンリン。龍仁(ヨンイン)大学の学閥という一党独裁色の強い韓国柔道界で(秋山成勲もこれで苦労した)、アンは日本の桐蔭学園→筑波大学という韓国柔道では異色の経歴を持つ在日コリアン3世。選抜体重別も制したダークホースだ。こちらも組み手は左。(追記…韓国のサイトではアンの所属大学は龍仁大学だった。情報があやふやで申し訳ないが)
さっきのタタラシビリの長所がパワーやフィジカルなのに対し、アンの長所は機動性の高い瞬間的なスピードと技をかけるタイミングだ。
最初の試合でも日本選手にまるでお手本のような内股すかしで相手を宙に回したり、相撲の投げの打ち合いのようなタイミングで、相手が懐に入る直前のカウンター気味の背負い投げなど、技のバリエーションが多い選手だった。
タタラシビリは準決勝で、アンは決勝で日本の秋本啓之の軍門に下ったが、勝った秋本もリオ五輪でも、うかうか出来ないくらい二人は実力者だった。
