①ではざんばら髪の力士から見た今の角界の現状を考えた訳だが、②でももう少し掘り下げて考えてみたい。

先日ボクシングのネット掲示板にあったが「ざんばら髪のアマチュア上位力士のプロ転向での成功例もそうだが、ボクシングもアマチュアのトップ選手のプロ転向例が増えて、世界王者も元トップアマが大半になった」という指摘があったが、確かに今のボクシング界でもプロ叩き上げのボクサーで世界王者レベルなのは河野公平や田口良一・下田昭文など数えるほどだ。

こうしたプロとアマの実力差の急速な縮まりというのは格闘技界全体の傾向である。

しかし以前にも指摘したことだが、こうした急速な出世スピードのスポーツエリートの増加というのは良いことだけではない。

それは何故かと言うと、こうしたスポーツエリート(格闘技エリート)が増え過ぎると、一般の選手(力士)がもともとトップアマの方が身体的な潜在能力も高い上に、試合の経験値やプロ転向後のその業界とのパイプ(コネクション)も向こうの方が太く、そうなると一般の選手が敵う隙が無くなり、競技者を続けるモチベーションが無くなるのである。そしてそれが競技人口の減少に繋がる。

事実、今の角界でも(不祥事など他の要因もあるが)新弟子のなり手が減っていって相撲部屋の運営が難しくなったり、ボクシング界も前座ボクサーが戦う4回戦ボクサーのマッチメイクができなくなったり、後楽園ホールでのボクシング興行が激減したりと、若い格闘家の絶対数が減りつつある。

もっとも現在における若年層の失業率の慢性的な高止まりの前には、若者自身が老人の利益中心に回っているプロ格闘技の世界にうつつを抜かしている場合ではなくて、それが競技人口の激減に繋がったいる。

日本の場合、格闘技でも何でもその世界の純粋培養のエリートを好む傾向があるが、そうすることが良いことばかりではないことを意識する必要がある。