①ではスペインやイタリアの歴史とサッカーの対立の構図を示したが、こうしたモノは別にこれらの国々の専売特許ではない。むしろ欧州ならどこでもある話である。では他の国の例も見たい。

欧州サッカーの中では比較的日本人にとって馴染み深い旧ユーゴスラビア。これらの国や地域などまさに歴史と宗教による対立しかない。

「ヨーロッパの火薬庫」「人種のモザイク」と呼ばれた旧ユーゴは欧州の中でも対立が深い地域である。

そもそももとは一緒の国だったのになぜ分裂したのか?という話である。「欧州の歴史は分裂と統合の繰り返し」と言うが、分裂したのもタイトルにある「歴史」や「宗教」が絡んでくる。

第二次大戦後に米国とソ連が自分の領域を決めて、ソ連側の共産圏に旧ユーゴが入った。

そのためセルビアのレッドスター(現地語読みツルベナ〈赤〉・ズベズダ〈星〉)というのは共産圏のシンボルカラーから来ているし、クロアチアのディナモ・ザグレブもディナモは共産主義時代のダイナモ(発電機)から来ている。

しかし旧ユーゴでも宗教1つとってももともとセルビアはロシアやギリシャの東方正教会の一派(セルビア正教)であるし、クロアチアはローマ・カトリックと同じ国家で統一することが難しく、それが1990年代の最低最悪の悲劇であるユーゴ内戦になった(繰り返すが最悪の悲劇である紛争と娯楽の1つであるサッカーを同一視する気はない。しかし欧州にある民族対立の構図を示すために説明しているのだ)。

その内戦が収まっても旧ユーゴにはまだサッカー文化は存在し、地域間でのダービーもまた存在するのだ。

サッカーの母国のイギリスもスコットランドのグラスゴー(プロテスタント)とセルティック(カトリック)と国内の宗教的な対立構図は存在する。

イギリスの場合はアイルランドのIRAなどに見られる歴史的な対立というより、ヘンリ8世(1491~1547)が1509年に創立した英国国教会から端を発した宗教的対立の要素が強い。上記のスコットランドダービーでの対立はそうしたイギリス社会の一部でもある。

ここまで書いておいてなんであるが、スポーツと戦争というのは(矛盾した言葉に見えるかもしれないが)断じて違う。しかし欧州社会にあるダービーというのは、それぞれの国々に様々なバックグラウンドがあって成立しているのも事実だ。

今の日本の欧州サッカーに対する報道が競技の表面的な部分しか見えてなかったので、今回はこうしたブログを書いた。