①では名作「はじめの一歩」の対戦相手の速水というボクサーが予言していた日本ボクシング界の問題点が現実になった、という話をしたが、②では具体的な問題点の中身について見てみたい。

①で言ったように速水は作中のボクシング専門誌に自分の活躍する世界の問題点を指摘した。

それは「ボクサーってハードな割に報われないですね。4回戦のファイトマネーは5万円(現在は6万円)ですよ。これじゃ誰もやる気にならない。マイナーになる一方です」「だから僕(速水)が日本ボクシング界のカリスマになって、この世界を引っ張っていくんです」という言葉だった。

ネタバレをすると速水は主人公の一歩に1RKO負けを喫し、その日本タイトルに挑戦する機会もあったが、一歩との試合でグラスジョー(顎〈=アゴ〉の耐久力が低下して、すぐ倒される打たれ脆い顎になること)になりこちらもKO負けで最終的に無冠のまま、ひっそりと引退した。

しかし本題に入るがプロの世界で挫折した天才ボクサーの予言というのは、今のボクシング界で現実になった。

①で速水がボクシング界の構造的矛盾を指摘した時は1991年。この時プロボクサーに多かった18歳は逆算すると1973年生まれ。

この1973年生まれというのは第2次ベビーブーム(1971~74年)の中でも特に出生数が多くて209万人いた。

当然1991年頃は4回戦ボクサーのなり手も多く、いわゆる「買い手市場」でボクシング界の興行主は安い搾取のようなファイトマネーでも興行は成立できていた。

…ところが…

今年(2015年)の場合、新成人は約125万人。ここまで若者の人口が激減すればボクサーのなり手も同様に減っていって、当然ボクシングの興行も立ち行かなくなり、今の4回戦ボクサーはデビュー戦で30歳というのも普通で、常打ち小屋(常設会場)のある東京でもボクシング興行は減っている。

その上、今の若者は物心ついた頃から不景気なので、割の合わない夢なぞ見てる余裕はないのだ。

こうして見ると日本のボクシング界というのは(言葉は悪いが)若いボクサーへの搾取が前提に成り立っていた部分がある。

しかし、これから少子化が加速していく中で「今まで何とかなったから、これからも大丈夫」というのはもう通用しないのである。

今回は自分の経験したボクシングから例を出したが、他の競技でも今まで通りは通用しないというのは共通するだろう。

このブログを読んでくれている読者の方々が、自分のフィールドに照らし合わせて自分の住む競技について再考してもらえれば幸いである。