冒頭のタイトルにある速水龍一という男は筆者の人生を決めた漫画である「はじめの一歩」で主人公の幕之内一歩が最初出場した、東日本新人王の準決勝の相手である。
この速水は並のボクサーではなく、インターハイのアマチュアボクシングの試合で無敗で優勝した天才ボクサーだった。
しかも速水はボクサーでも顔を打たれてない上に元が端正な顔立ちなので、今で言う「イケメンボクサー」の走りだった。
こうしたバックグラウンドがあった速水は4回戦ボクサー(プロ野球で言えば3軍)なのに、一般の女性向け雑誌の取材も受けるような注目株であった。
しかしそうした速水はただ周りにおだてられて天狗になっている若者ではなく、当時の日本ボクシング界に対する危機感のようなモノを心の中で秘めていた。
その速水の心の中にあった危機感というのは今の日本ボクシング界の末期的症状を予言していた。
この漫画の中の速水が作中のボクシング専門誌のインタビューで答えていた話は1991年2月初版の7巻だったが、このJリーグ発足の2年前に出た漫画で速水が指摘していたボクシング界の問題というのは、四半世紀経った今の後楽園ホールの構造的矛盾と一致していた。〈②に続く〉