さてさてこうしてひょんなことから初めてのフェンシング体験をする訳だが、相手は県のフェンシング協会の職員。勝てる訳はないのだが、折角(せっかく)体験出来る以上楽しんだモノ勝ちなのでやってみようと思った。
まず構えから見てみたが、フェンシングの場合利き腕の前にするのが本来の構えである。つまり利き腕が右だったら、右手・右足を前に出す。
利き腕を前に出す格闘技は多い。柔道・剣道・少林寺拳法・日本拳法など東洋の武術は基本的に利き腕が前だ。それに西洋の格闘技でもレスリングも利き腕が前である。
フェンシングも前述の格闘技と同じ利き腕が前なので、こちらの仲間だ。
余談だが筆者のやっていたボクシングは利き腕が後ろ(右利きだったら左手が前)で、こういう格闘技は他にキックボクシングや総合格闘技ぐらいで少数派だ。
脱線した話をフェンシングに戻そう。ここからがフェンシングの特殊な部分でもあるが、普通どういう格闘技でも構えを取る時に両方の足の爪先は基本的に前を向いているモノである。
しかし、フェンシングの場合は前足の爪先は前方を向いているが、後ろの足は真横を向いている。
わかりづらいかもしれないが時計で例えてみることにする。右構えで考えてみると、右足が正面(時計の針でいえば長針で12時の方向)を向いていれば、後ろの足(左足)は真横(時計の短針で9時の方向)を向くことになる。
つまりフェンシングの右構えだと時計の針で例えると9時を指すことになる(サウスポーなら3時)。
そうしてようやく対戦となるが、フェンシングという競技は基本的に、縦の直線的な動きと間合いでの駆け引きありきの格闘技である。
ボクシングや柔道だと横の揺さぶりという要素も駆け引きの一つだが、フェンシングの場合はそれがない。ひたすら縦ありきである。
勝敗は先に15本先取した方が勝ちで、もしくは3分×3セットやって、その中で取った本数が多い方が勝ちになる。
もちろん本物の対戦ではないので協会の職員の人とゆるくやっただけだが、相手の胸に自分の剣先を当てるだけなのになかなか当たらない。職員の人の剣先が邪魔をして(そういう競技だが)うまくヒットしない。
そしてあっさり相手の剣先が自分の胸元へグザリッ!
いとも簡単にポイントを失ってしまった。当たり前だがフェンシング協会の人は強かった(もちろんポッと出の飛び入りに簡単に負けて貰っても困るのだが)。
これはサッカースタジアムのコンコース内でのゆるい初心者向けの体験コーナーだったので当然スペースも限られていたが、 本物の試合になると選手はもっとロングレンジの長くて遠い間合いから一瞬で相手の胸元を刺しにいくことも狙うし狙えるということである。
サッカースタジアムという思わぬところでフェンシングという競技を体験出来ることになった。筆者も貴重な体験が出来て有意義な経験となって良かった。