①ではボクシング世界戦から見た放映権料の問題を考えていったが、②では具体例から見てみたい。
今年も三分の二(2015/09/10に執筆)以上を消化したが、今年の首都圏でのボクシング世界戦というのは現時点でたった2回だけで(このブログがupされている時には山中慎介が世界戦を大田区体育館でやっているので計3回)ある。
その一方でここ数年日本人ボクサーが海外で世界挑戦するケースが増えている。
今年はバンタム級で岩佐亮佑(IBF)がイギリスで、赤穂亮(WBO)がタイでそれぞれ世界挑戦をして、どちらもKO負けでタイトル獲得に失敗した。
試合結果もそうだが日本のボクシングファンや関係者はこの事実に衝撃を受けた。
というのはバンタム級という階級は、日本のボクシング界にとっていわばお家芸のような世界戦を地元開催しやすいクラスであった。
ここ何年でも辰吉丈一郎や西岡利晃・長谷川穂積など(全てWBCで、西岡は後に一階級上げてタイトル挑戦)日本のボクシング界の歴史にとって決して外せない伝統のある階級である。
しかしそんな日本が世界戦交渉で大の得意としてきた階級でも、2度も地元開催に立て続けに失敗したことは(筆者含めて)かなりのショックだった。
地元開催なら勝てる可能性があった日本人ボクサーが勝てなかった。その理由として首都圏で世界戦が組めなくなっていったことがあり、それはテレビ放映権料が世界戦興行で資金が入らなくなったというのも意味している。
テレビ放映権料が入らなくなったのは①テレビからスマホへ日本人の興味が移り、視聴者の絶対数が減った、②日本人全体がボクシングという娯楽に飽きた上に、ボクシングに対してナショナリズムの対象としての興味がなくなった、③そうした中でテレビ局もボクシングの世界戦にうまみがなくなった番組枠を確保しなくなった、というのが挙げられる。
こうしたメディアの中の産業構造が激変する中で、日本のボクシング界は旧態依然とした体質から抜け出せず才能あるボクサーをバックアップ出来なくなっている。
正直に言って今のボクシング界に新たなビジネスモデルを構築出来るイノベーターがいるとも思えない。ただ言えることは世間の人たちがボクシングに興味を示さなくなった現代に、今までのやり方でやっているとボクシングは娯楽の海という激流に淘汰される。その荒波を乗り越えられる新しいビジネスモデルが必要だ。