①ではbjリーグのファイナルの仕組みを見てきたが、②ではそのファイナルに出場した4チームの顔触れから見たbjリーグの効果的な拡張戦略について見てみたい。
この時の東地区カンファレンスの決勝は秋田ノーザンハピネッツvs岩手ビッグブルズで、西地区は浜松・東三河フェニックスvs滋賀レイクスターズだった。
「これの何が上手い拡張戦略なんだ?」と思うかもしれないが、この4チームにはある1つの共通項がある。
秋田・岩手・浜松・滋賀。この4つの自治体に共通するのはプロ野球球団やJ2から上のプロサッカーチームが存在しないというところである。
この顔触れからbjはリーグが使える資金や人材というモノを効果的に注入しているのが伺える。
今どこの地方自治体も若者の人口流出というのが悩みの種だ。地元に若者を集めたい。その手っ取り早い手段としてプロスポーツチームを地元に誘致したい。
しかしプロ野球球団は年間の運営資金が最低でも100億円でJ2でも中位を維持出来るチームなら12~13億円は必要だ。
しかもサッカーの場合は年間運営費の問題もそうだが、初期投資として必要なサッカー専用スタジアムが100億円必要である。
それにサッカーだと県や地域リーグから事実上収入が期待出来ないチームを長期間保有するというデメリットもある。
どちらも税収の下落や地方債の発行に限界が来ている地方自治体に簡単に手が出せる金額ではない。
しかしプロバスケチームなら選手の保有人数も15人程度で済んで人件費もかからず、会場も地元の体育館で可能だ(今、川淵がアリーナの基準について地方の自治体首長と揉めているが)。
こうした年間運営費が1~2億円と比較的安価でチーム運営が出来るプロバスケというのは、地元にプロスポーツチームが欲しいけど野球やサッカーは地元の財政から考えると難しいという自治体からすると、やりやすいスポーツビジネスである。
bjとしてもプロスポーツチームが多い首都圏など大都市圏では、ライバルも多く集客に苦労している。
そうした意味でライバルになる他の種目のプロスポーツチームがない自治体にバスケチームを作るのは、リーグとしても集客としてマーケティングの費用対効果が出やすいというメリットがある。
自分たちのリーグを効果的に拡張したいbjと若者の人口流出に歯止めをかける上に、経営上のリスクが比較的低いプロバスケチームを保有したい地方自治体との利害が一致したこともあって、bjは効果的な拡張マーケティングに成功した。
今年(2015年)はNBL(実業団)とbjが発展的統合をした記念すべき年だが、その裏ではbjの効果的な拡張戦略があったのも忘れてはならない。