①では先日のアウェーでの代表の試合について、アウェーでの声援がいかに厄介極まりないモノかと言うのを述べていったが、②では他の事例を出しながら考えてみたい。
スポーツにおける声援の影響の重要性について思い出すのは、筆者が最大限に敬愛するプロサッカー漫画家の能田達規の代表作の1つ「オレンジ」(同一タイトルの少女漫画とは無関係)である。
主人公の所属する日本のプロサッカー2部リーグの南予オレンジが昇格争いのライバルである首位さいたまレオーネをホームで迎えた試合で、オレンジが2点ビハインドの上にチームの得点源の若松ムサシと青島コジローとのホットラインが遮断され、シュートシーンすら前半はほとんどなかった。
ハーフタイムを挟んでチームがムサシとコジローが、この試合はこの連携パターンと心中する覚悟を決めて後半に臨んだ。
通用しない攻撃パターンは当然相手に遮断されていたが、この時チームを救ったのはホーム3万人の大観衆の声援と相手に対するブーイングだった。
ムサシへのPA内へ相手DFがアフタータックルしたのを主審は一回目は笛を吹かなかったが、この時会場内は地鳴りのような大ブーイング。
審判も人の子だったのかこの大ブーイングで心理的な感情の揺れが出て、次に同じようなシーンがまたもPA内で起こった時にPKの指示を示した。
これをムサシがきっちり決めてオレンジは攻略の糸口が見えない中で、点差を1点に縮めた。
「たかが漫画と現実の試合を一緒にすんなっ!」と思われるかもしれないが、実際に会場で試合を見ているとここまで劇的ではないにしろ、似たシーンを目撃することもある。それだけ試合において声援というのは大きな影響を与える。
「声援が俺の(ポパイにおける)ほうれん草!」と元ジェフFWの深井正樹は名言を残したが、声援が選手のほうれん草なのは何もサッカーだけではない。筆者が競技者としてやってきたボクシングも同様だ。
先日のサッカー代表で中東の声援が嫌だったのと同様に、日本のボクサーがアウェーで嫌なのはタイでのタイトルマッチだ。
筆者も現地で見たことあるが、タイのボクシング世界戦というのはタイ人が打つ探りの左ジャブ一発だけでも、地元の大観衆はまるでダウンを取ったような大声援を起こす。
それが1Rから12Rまでずっと続く上に相手がダメージングブローを与えてもピクリともしない。
しかもボクシングの採点というのはサッカーのゴールと違い、客観性のあるモノではなくあくまで採点するジャッジの主観である。
そうした状況だから一発勝負の世界戦ではいかに地元開催にするかというのが、陣営にとって重要な要素になる。そして日本のボクサーはタイでのタイトルマッチにほとんど勝ててない。
こうして見るとどういう競技でも声援というのは勝敗を決めるのに馬鹿に出来ない重要なファクターである。その為その競技の主催者は興行の利益を上げる為のみならず、勝敗を有利にさせる為にも試合の(声援を送る観客の)集客が重要なのである。