①では収穫逓減の法則に必要なプロセスを説明してみたが、②では具体的な事例も見てみたい。

収穫逓減の法則でまず思い浮かぶのは、サッカーのリフティングである。どんな選手でもサッカーを始めたばかりの頃は、リフティングはほとんどできないのが普通だ。

しかしそんなサッカー初心者のような人間でも、リフティングを延々続けていくとある時急に何百回もできるようになる。

この数をこなす練習の先にある急激な技術の向上。それが「収穫逓減の法則」である。

もっと細く説明すると、今言った急上昇するタイミングは厳密には「クオンタムリープ」と呼ばれる。

その一方でこうした急激な技術の向上というのはずっと続くモノではない。

以前筆者が最大限のリスペクトをしている漫画家の古谷野孝雄の高校サッカー漫画「ANGEL  VOICE」でも高校からサッカーを始めた部員のクオンタムリープ時のような技術的進歩を見せるシーンもある。

しかしこの急激な技術向上のピークが来て、その後数をこなしてもクオンタムリープ時ほど練習の効果が出ないときが来る。

厳密に言えばこのピーク時のあと、この数をこなしてもさして意味をなさないときが「収穫逓減の法則」である。

これは現実のスポーツでも当てはまる。今年(2015年)に入ってサッカー日本代表が成長の壁にぶつかっている。

筆者はこれは先の例で言えば、最初日本代表しJリーグ創成期に物凄い勢いで成長した時期があったが、この頃がクオンタムリープの頃で、成長のスピードが鈍化して壁にぶつかっている今の代表が収穫逓減の法則の時期である。

スポーツというのは(語学でも楽器でも同様だが)数をこなして習得した先に急激に伸びる時期があるが、その後どんなに努力しても成長が止まる頃が必ず出てくる。

そうした時に成長が止まった選手が「成長しないのは自分の努力が不足しているからだ」と勘違いするかもしれない。

しかし選手に周りの人は、スポーツの技能習得には必ずこういう時期がくる、というのを知識として知っておく必要がある。

選手の努力が効果的なトレーニングになるか単なる徒労に終わるのか、その選手の成長の分かれ目になるのだから。