〈①からの続き〉その関西の会社が社員の親睦を深める為に主催した運動会の会場が大阪ドーム(!)であった。組織に対する帰属意識が育てづらく個人主義が強くなった現代において、こうしたメソッドというのは費用対効果が高い戦略である。

このブログの読者なら解ると思うが、筆者は普段スポーツのブログばかりを書いている。スポーツというのは基本的に勝った負けたの白黒がつく世界である。特に1990年代以降プロスポーツというジャンルがメジャーになり「1億2000万人総勝負師社会」とでも言うべき、国民全てが「勝ち組」「負け組」と言うような勝ち負けにこだわる時代になった。

…しかし…

スポーツという世界において勝敗というのは勿論重要なファクターだが、この会社の運動会のように普段は顔を合わせない社員同士が、何か1つの競技に対して目的を一致させて勝利の為に努力するという要素もあり、単なる表面上の星の色(結果)や得点以上に大切なモノも存在する。

こうしたイベントに対して大切なのは大会の勝敗よりも、疎遠だった社員同士が結束を強める為に試行錯誤していくプロセスが重要なのである。

しかしそうした会社の運動会というのも昔に比べて、最も一致団結させたくてコミュニケートしたい若い世代の社員が参加させづらくなっているのも事実だ。

昔だったら家電製品で釣らせることも可能だったが、今の時代景品にデジカメを用意しても若い社員は「写真はスマホで撮ります」と一事が万事こうしたリアクションをされ、タダ酒を奢る(おごる)と言ってもそもそも酒を最初から飲まない(あまりにも飲酒の悪影響を謳った情報が氾濫しすぎだ)といわゆる「笛吹けど踊らず」である。

こうした価値観が多様化した時代に若者を引っ張るには一種のステータスを活かすのも手である。それが前述の関西の企業の「会場・大阪ドーム」である。

大阪ドームでもインパクトは強いが、都内の企業や大学が運動会(学校の体育祭)に東京ドームを利用すれば、社員(生徒)の自身の組織への帰属意識が高まる可能性もある。

そもそも東京ドームは以前は1日の使用料が1750万円(日本武道館は550万円)とべらぼうな価格だったが、昨今は都内にも東京ビッグサイトや東京国際フォーラムなどアクセスや立地の良い場所に大きな会場がどんどん増えて、会場稼働率は減少傾向だ(ましてやプロ野球でも以前日本ハムが東京ドームから札幌に移転したのもある)。

先日ツイッターで東京ドームで草野球をするのに「9人対9人で1人2万円でプレー可能」と言うのもあって、会場使用料も減額出来る日もあるようだ(何せツイッターなのではっきりとしたことはわからないが…)。

長くなったが今の時代人の心に帰属意識が生まれるのが、空地や裏庭に雑草が生えるように勝手に育つモノではない。上層部の人間も理解しておいた方が良い。