こうして書いてきたモノの続きになるが日本の学生野球という世界も単なる汗と涙の青春ストーリーの世界から、スポーツの世界で最も困った存在である不確定要素というモノを究極に合理的に排除した、一種の(嫌な表現だが)選手自身が自分を売り込む人身売買の世界に変化していった。

そうしたきな臭い世界でもなおのこと合理化が加速する高校野球の世界の新しいスタンダードが、今言った「中高一貫校」というトレンドである。

こうした野球強豪校の附属中学に入部する選手というのは、基本的に小学校時代にシニアやヤングと言った強豪の硬式野球リーグの有望選手を「囲い込み」することから始まる。

こうした中学の野球部だと軟式野球が主流だが一部では青森山田や佐世保北のように、学校が学内に独自のシニアリーグのチームを保有して将来の高校野球部といういわば「トップチーム」への昇格の為に選手に英才教育する学校すらある。

そこまでいかなくても中学は学内の軟式野球部で自前の育成をする学校も多く、星稜や仙台育英・明徳義塾と言った甲子園の常連校でも、初期段階の純粋培養の流れは高校野球では増えている。

もともと日本の学生スポーツというのは学校に所属する生徒の身体面の育成とスポーツを通じての精神面の発達促進が主な目的だったが、今の学生野球というのはぶっちゃけ単なる選手の肉体を商品化したスポーツビジネスの世界になってしまった。

こうして言ってしまうと身も蓋(ふた)もないが究極的に合理化したスポーツビジネスというのは、学生スポーツなら尚更だがスポーツ本来の魅力すら奪ってしまう。

筆者のようなスポーツを知らない凡百な者の杞憂なのだろうか?

参考文献 R25 2010年7月16日号