今まで緩急について長々と書き連ねているが、緩急の重要性というのは何も格闘技だけではなく球技でも同様だ。
緩急の重要性にいち早く気づいたスポーツというのはやはり野球である。
ブロ野球という世界というの東大卒(毎年3000人が入学し、内半分が男性)とは文字通り桁外れの人しか入れない(毎年約100人強)選りすぐりのエリート社会なのだが、その選りすぐり達も高校野球とプロ野球では当然レベルも違ってくるので闘い方を変えないと、厳しいプロの生存競争の世界では淘汰されてしまう。
特に高校野球ではMAX147キロのストレートと140キロ台前半の高速スライダーだけで、甲子園では生き残れる。
しかしプロの一軍を任された野球選手にとっては、この球種だけでは心許ない。
特に北中米から日本のプロ野球選手(いわゆる助っ人外国人)というのは、このスピードでも打てる速球好きというのはいわばカモである。
そうした打者に対しては速球のスピードを上げる努力よりも、むしろ変化球でかわす要素が必要になる。
そうした中で重要な変化球の代表例はチェンジアップである。投手の腕の振りはそのままで、遅いボールを投げることにより打者のタイミングをズラして緩急を使って打ち損じを狙う変化球だ。
他にもスライダーでも指先の感覚をすこしズラして曲がる速度を意図的に遅くさせる「ゆるスラ(ゆるいスピードで投げるスライダー)」で速球好きの強打者をかわす変化球もある。
ゆるスラやチェンジアップで打者のタイミングをかわす変化球もいろいろあるが、速球派の投手がこうした変化球を覚えてピッチングの幅を広げるというのは球界ではよくある話である。
野球やボクシングで出来て日本で一番注目されているサッカー日本代表にできない訳がない。高速化による効率第一主義へのアンチテーゼとして日本代表も攻めの緩急というのを覚えてもらいたい。