①・②ではFIFA会長選挙の政権闘争について見てきたが、③ではその後会長になったブラッターの経緯を見てみたい。
前にも言ったがブラッターはアベランジェの懐刀だった。ブラジル人のアベランジェがどうしてサッカーの本場欧州の理事を向こうに回してFIFA会長になれたのか?
それはFIFA会長選挙が「1国1票」で、当時全く相手にされなかったアフリカやアジアの理事に、正式なサッカーでの公的援助をする代わりにFIFAの選挙で自分(アベランジェ)に投票してくれと頼んだ。
そうしてアジア・アフリカから支持されたアベランジェはFIFAでのし上がった。
その時アベランジェのもとで働いていたのがブラッターだった。ブラッター自身は欧州出身だったが、こうした上司のやり方を学んで支持母体はアジア・アフリカが多かった。
そのせいかアベランジェやブラッターがFIFA会長になっている間は、それまでサッカー界で亜流であったアジア・アフリカでのW杯が多かった(2002年・日韓大会、2010年南アフリカ大会、ブラッターが会長時に2022年のカタール大会も決まった)。
特に近年はそれまで貧困国が多いイメージのあったアジアが経済的に急速に力をつけてきて、自分達の国威高揚をしたい金のあるアジア各国と、サッカーを使ってお金を稼ぎたいFIFAの利害が一致して今回のFIFAの汚職問題に繋がったところ大きい。
夢を売るイメージのあるサッカービジネス。しかしその足元は血の海が広がった魑魅魍魎のサバイバルの世界である。〈④に続く〉
参考文献 朝日新聞GLOBE 2014年5月4日号 国際サッカー連盟の針路