スポーツの世界にとってライバルの存在というのが本人のポテンシャルを高める為に重要だという話をしているが、それは他のスポーツでも同じである。

先日読んだF1の本でレースにタイヤを供給していたブリヂストンのエンジニアの浜島裕英氏が「ワンメイク(F1レースのタイヤを一社のみで全チームに供給する体制)は苦しい」と言っていた。

この中で浜島氏は「ワンメイクだと当たり前だが勝利の喜びがない。それにライバルメーカーがいないと目標も競争意識もなくなるのでつまらない。それどころかライバルがいないと油断に繋がる。F1の世界だと油断は大事故を引き起こす。ライバルがいないとタイヤメーカーは技術開発に進歩もハリもなくなる」と要約するとこんなことを言っていた。

一般のビジネスにおいて競争相手がいなくなるということは朗報以外の何物でもない。

しかしスポーツという世界やそれに伴う技術開発の世界において、ライバルがいなくなるというのは最初のうちは楽かもしれないがすぐにその状態に飽きるというか、時間を持て余すような無力感に苛まされる(激務のサラリーマンが会社を辞めた後に最初は良いが次第に時間が有り余る生活に虚無感を感じるのと同じだ)。

ライバルの存在というのは存在している内はまさに目の上のタンコブのようなモノだが、いないといないでつまらない。それが「ライバル」なのだ。

参考文献  世界最速のF1タイヤ  ブリヂストン・エンジニアの闘い  浜島裕英  新潮新書  2005年