スポーツの現金化 (その302・才能の壁②)

<①からの続き>そんな東南アジアのボクシング界のディープな深淵さを垣間見た筆者は、帰国してからも日々のバイトの合間に練習をして、当時の唯一の情報源であったボクシング専門誌を穴が開くまで読む日に戻った。

そうした中で1つのニュースに目が止まった。

ポーンと同じ階級の韓国人世界王者がソウルにポーンを呼んで防衛戦をやるというのである。

少し前に東南アジアに行ったので旅費はなくすっからかんなのでソウルまでは行けないが、一期一会で知り合ったタイ人ボクサーの晴れ舞台が気にならない訳はなかった。

しかも韓国のボクシング界は当時IMFショックの真っ只中でプロスポーツどころではなく、テレビ局もボクシング中継に飽きて、世界戦に必要な多額の費用が集まらない状況であった。

ましてやその韓国人王者も世界的に見て並・上・特上と分けるなら並の王者であった。

頼まれもせず分析した筆者は「(ポーンは)勝てる!!」と勝利を確信していた。

…しかし…

ポーンはその韓国人に世界戦でボコボコにされてKO負けを喫したとあった。KO率の低いマラソンランナー(撃ち合わず足ばかり使う逃げるボクサーを揶揄する隠語)の韓国人王者に手も足も出なかった。

筆者がタイで受けた①の衝撃の次にもっと大きい衝撃を受けた。

しかもこの話は日本とタイ・韓国とアジアから出ていないのである。アジアだけでもこんなに凄いヤツがゴロゴロしているのに世界になるとどうなるんだ？と気が遠くなった。

今回はボクシングの話をしたが野球でもサッカーでも同じである。というよりサッカーの方が競技人口は多い。今日本のサッカー界は代表もクラブチームも壁にぶつかっていてもがいているが、それだけアジアの壁、世界の壁、才能の壁が一筋縄ではいかない分厚い壁なのだ。