<前編からの続き>それにしても何故キューバ人アスリートはここまで危険を冒して亡命するのか?

答えは「金」である。身も蓋(ふた)も無いと言えばそれまでだがあまりにもアメリカとキューバでは通貨価値に差があり過ぎるのである。

キューバの勤め人の初任給が2000円(!)という安さを考えればボクサーであれ野球選手であれ、世界の富が集中するアメリカに亡命したがるのは仕方ないことである。

脱線するがキューバ球界では日本のプロ野球でのプレーを解放に踏み切り、巨人のセペタやDeNAのグリエルが1億から1億5000万円の年俸でプレーできるようにして、アメリカへの亡命に歯止めをかけようとしている。

脱線した話をボクシングに戻そう。リゴンドーは亡命してアメリカでのビッグマッチを戦ってきたが、前にも言ったように戦う理由は「金」である。

負けてしまったら試合を組んでもらえなくなる。その為に「ド」が付くくらいのカウンター狙いの消極的な戦法でテクニックは凄くても内容はつまらないのなんの…。それでも世界タイトルも獲得したがフィリピン人の新たな英雄ノニト・ドネアとの統一戦も判定はリゴンドーだが凡戦もいいところであった。

そんな金を稼ぐ為の凡戦メーカーになっていたリゴンドーはアメリカのテレビ局やプロモーターに干されてしまい、「職場(アメリカのリング)」を失い活躍の場を東洋に求めた。

もともとリゴンドーの階級は東洋人の選手層が厚い地域である。アメリカほどの稼ぎはなくても東洋で小さくコツコツ稼ごうという腹だったかもしれない。

そんなリゴンドー側の思惑の一方でTBSの大晦日特番のプロデューサーはメインの井岡一翔の世界戦交渉が不調なことから他のメインのカードを必要としていた。

そんな状況からリゴンドーが日本に来ても良いという一報が届く。リゴンドーを日本に呼ぶ為にプロモーター(主催者)側が用意したのは50万ドル(約5950万円)。先日アメリカで行われたWBC・Sバンタム級王者レオ・サンタクルスのファイトマネーが75万ドル(約8700万円)なのを考えるとお手頃な費用で呼べたように見える。

かくして昨年(2014年)の大晦日はキューバ人絶対王者を呼んでボクシングが盛り上がったが(試合内容はリゴンドーらしからぬ激戦だったが)、世界戦の攻防の裏にはこんな一面もあったのである。