今年(2014年)もJリーグもリーグ戦が終わり残すは天皇杯のみになった。ブラジルでW杯もあり惨敗だったがその後アギーレ体制になり、来月(2015年1月)にはアジア杯も真夏の豪州であり、Jリーグが生まれて20年以上経ちサッカーという競技が文字通り現金化や産業化した感がある。

そんなサッカーもそうだがプロ野球も他のスポーツに押されて改革をするようになり、バスケやバレーもプロ化してここ25年程の日本ではそれまでには考えられなかったようなスポーツビジネスというジャンルが定着してきている。

そういったスポーツビジネスが定着するようになり、昨今の大学や専門学校では学内に「スポーツビジネス学部」「スポーツビジネス学科」「スポーツマネジメント」といったスポーツビジネスを教える講座を作るところが乱立するようになった。

少し資料は古いのだが2007年までの5年間で全国に48学科まで増えて(おそらくこの後も増えている)、属する学部も経営学部・商学部・体育学部・人間科学部・国際関係学部など様々である。

日本のスポーツマネジメントはアメリカのそれを輸入して持ってきたもので、日本でも体育教師以外にもスポーツを仕事にすることを希望する学生が増えたという。

しかしこれだけ乱立すれば問題もある。スポーツ教育で有名なある私立大学では2007年度の就職状況を見ると、一般企業への就職が50%を越えており、スポーツ関連企業への就職は17%しかない(この他教職員が13%で進学・留学が5.8%)。スポーツマネジメント学科を日本ではじめて設立した有名私立大学でさえこの比率である。

川崎フロンターレのフロントでアイデアマンで有名な天野春果氏も自身の著者の中で、「最近、若者の中にスポーツビジネスに興味がある人が増えていると聞く。大学や専門学校でも『スポーツビジネス』『スポーツマネジメント』などの学部、学科、コースが新設されている。しかし、この土壌の部分を学べるだけのカリキュラムを擁する学校は少ない。やはり出来上がった部分から先にあるビジネスの知識が多く、ネットサーフィンをしていれば入手できる情報を教えている感がある」と言っていて日本の大学のスポーツビジネス学科の中身の薄さを指摘している。

元々筆者(独眼鉄)もこのブログの固定読者なら分かるだろうが、スポーツビジネスというジャンルには昔から興味があった。

しかし日本国内にあるスポーツビジネス学科という組織の大半は、中身の薄い形式的で形骸的なことしか教えていないのが現実である。筆者が大学生時代に所属していた大学で「スポーツビジネスを勉強したい」と言えば「お前は馬鹿か?」「真面目に考えろ」「現実逃避だ」と当時の大学から全否定されたものである。

それが今の大学は急激な少子化で学生の確保のみしか目が行かなくなり、口当たりの良い言葉で受験生をごまかし「夢を仕事にしよう」と言って、こうした形骸化した学部を乱立して生徒集めをしているのである。悲しい話だがこれが現実である。

筆者自身こうしたスポーツビジネス学科の現実を知っているので、スポーツビジネスをやりたい若者に(夢を潰す気はないが)助言するなら「日本のスポーツビジネス学科に入ってもそれほど意味がある訳ではない」と言うしかない。

以前プロ野球日本ハムファイターズのオーナーの大社啓二(おおこそ・けいじ)氏が「スポーツビジネスなんて詭弁。ビジネスはビジネスである」と言っていたが、スポーツビジネスをやりたいならまず一般企業に入って、日本の商習慣を身につけてからでないと役に立たないのである。今回は悲しいが日本のスポーツビジネス学科の現実を述べてみた。

参考文献 Sport Management Review 2008 vol.11

僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ 天野春果 2011年 小学館