筆者(独眼鉄)も子供の頃から30年以上漫画を読んできたが、昔の漫画と今の漫画では作風というか読者が好むテイストのようなものが変わってきた傾向がある(昔が良くて今が悪いという訳ではない)。

何が変わってきたかというとタイトルに「純血種と交雑種」とあるが、昔はギャグだったらギャグ一辺倒のようなギャグ純血種やシリアス(劇画)だったらシリアス一辺倒(劇画純血種)といった純血種の漫画が多かったが(ギャグだったら1980年代のジャンプ全盛期のアラレちゃんや奇面組、劇画だったらさいとうたかをのゴルゴ13や少し毛色は違うが横山光輝の三国志)、今の時代は普段の世界ではおちゃらけてギャグを言いつつスポーツなどの本番の闘いでは締める時は締めるという、ギャグとシリアスの混血というか交雑種のような漫画が主流になりつつある。

交雑種の漫画のはしりとしては1990年代のはじめの一歩では、普段の試合の決まっていない鴨川ジムでは鷹村が下ネタで後輩(一歩や青木など)に悪ふざけをしつつ、試合になると選手たちはビシッと締めるという、ギャグと劇画の二刀流の要素を持った交雑種的なテイストになった先駆的な漫画、それがはじめの一歩である。

ただ最近の漫画でギャグとシリアスとの交雑種で代表的なのはONE PIECEのように見える。ONE PIECEはスポーツ漫画ではないが普段はルフィが我が儘(わがまま)で破天荒な行動で仲間にぶっ飛ばされたり、フランキーが変態チックなポーズをとったりしてギャグで笑わせつつ、闘いでは海軍や他の海賊との激闘で(勝つ時も負ける時もあるが)締めるところは締めるといった感じの漫画で現在の交雑種漫画の代表格のような漫画に見える(闘いではないが一度麦わらの一味を抜けたウソップに詫びを入れさせて一味に戻したシーンもあったが、あそこはこの漫画がただのギャグ漫画とは一線を画すシーンである)。

こうして21世紀の日本の漫画はギャグとシリアスの二刀流のような交雑種漫画が主流になっていったが、いつ頃からこういう傾向になっていったのか?1990年代のギャグ漫画で人気があった「行け!稲中卓球部」のようなギャグだったら徹底的なギャグ漫画というのが近年絶滅危惧種になってきている。

というのもある漫画家が言っていたが「ギャグ漫画家は壊れる」といって、純粋に四六時中120%ギャグ一辺倒の漫画(漫画家)というのはバランスを崩し、最悪精神の破綻にまで行くパターンもあると言っていた。

また漫画家に限らずジキルとハイドまで行かなくても、人間というのはいろんな顔というか二面性や三面性を持っていて、ギャグや下らないことを考えている時の顔やシリアスに真剣な顔、仕事の顔や恋愛の顔といった普段の我々は色々な顔を使い分けていて、漫画(一歩やONE PIECE)の方もこちらも色々な顔を使い分けているのである。結果的にこういう交雑種漫画の方が、現代の厳しい漫画界の環境に適者として生存し適応しているのである。

こうして今回は交雑種漫画と純血種漫画の比較と分析をしてみたが、今の時代は漫画家も読者も交雑種漫画の方が長持ちした関係が築いていけるのである。