先日NHKで五反田駅前のワタナベジムの72時間密着番組がやっていて非常に面白く、それも相まって今回は「スポーツの現金化」シリーズでボクシングネタをやってみようと思う(筆者のブログのボクシングネタは不人気なのだが…)。

ワタナベジムのジム頭は言うまでもなく「Knock Out Dinamite」内山高志(WBAスーパーフェザー級王者)だが(他にWBAスーパーフライ級王者河野公平もいるが)、この内山の前の試合が去年の大晦日で先日発表された次戦の試合が今年の大晦日。すなわち内山と河野は丸々一年のブランクが空いたことになる。

普通ボクサーがこれだけのブランクが空くの怪我が多いのだが、内山も河野もピンピンしている。彼らが試合を組まれなかったのはプロ格闘技用語でいう「試合枯れ」というヤツである。

ボクシング(キックや総合もそうだが)のようなプロ格闘技はジムの会長や会長と繋がりの深いプロモーター(試合の主催者)が、日時を決めて自費で興行の会場を押さえチケットを発行し(世界戦のようなビッグイベントなら)テレビ局と放映の枠を押さえて貰う。それらは繰り返すが会長やプロモーターの自費である。ここら辺が代表選考会を通過すれば出場が約束されるオリンピックとは異なるイベントである(テレビの枠を考えなければ後楽園ホールでの興行の仕組みも同様である)。

そんなボクシングの世界戦もボクシングジムの会長にとっては男のロマンのようなイベントだが、実際に世界戦の興行を取り仕切る主催者サイドとしては、普段の後楽園ホールのノンタイトル興行の苦労とは比較にならない厳しいモノなのである。

と言うのも元々内山と河野の世界戦は8月にセットされていて、河野の相手があの亀田興毅を予定されていたのである。亀田家はコミッションの罰則により現在国内の活動が出来ない(先日三男がアメリカで統一戦をしたが)。しかし主催者サイドとしては特例を出してでもネームバリューのある興毅を使って興行を打ちたかったが(テレビ局も乗り気だったらしいが)、結局業界内部やネット上のアンチ亀田家の猛烈な抗議により試合が流れてしまった。その巻き添えを食って内山高志も今年一年試合が出来なかったのである。

こういったケースもあるが業界大手のジムがチャンピオンメーカーとなって世界戦のマッチメークをするのは並々ならぬ苦労がある。内藤大助が王者になった時の宮田ジムも、こちらも亀田家とのマッチメークやメキシコ人ランカーとの折衝がつかず試合が流れたこともあり、世界戦のマッチメークというのは筆舌に尽くし難い苦労があるのである。

近年は特にネット動画に面白いコンテンツが沢山集まり、テレビ局の番組に訴求力がなくなってテレビの放映権料で世界戦の費用がペイ出来なくなっている(2013年9月10日号の筆者のブログ・スポーツの現金化・その14・放映権ビジネスの分岐点に参照)。

こうして一般の人が何気なくチャンネルを付けるとやっているボクシングの世界戦も裏では関係者が血の滲む努力をしているのである。