最近は野球やサッカーのようなメジャースポーツばかり取り上げていたので、今回はマイナースポーツのボクシングの話をしてみようと思う。
冒頭のタイトルにもあるように東洋タイトルというものを今回は考えてみたいと思うが、一般の方は日本より東洋の方が影響力があると考えがちだが、意外とボクシング界の中ではそう単純な話でもないのである。
というのも1990年代に加盟国持ち回りのコミッションでフィリピンのコミッションが東洋タイトルを管轄した時に、同国の管理が杜撰でタイトル挑戦資格のないボクサーにまでランキングやタイトル挑戦の機会を与え、コアなボクシングファンに顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまったのである。
その為モチベーションや意識の低い外国人ボクサーよりも日本人同士のマッチメークの方がファンに好まれる傾向が高まった。また沢木耕太郎のボクシングノンフィクション小説「一瞬の夏」でもあったが日本タイトルの場合は王者も挑戦者も日本人で、後楽園ホールの高い客席のチケットも赤青両コーナーも捌ける(さばける)が、東洋タイトルの場合は基本的に片方のコーナーは外国人なので、チケットの捌ける絶対数が違ってくるのである。その為プロモーター(試合の主催者)は日本タイトルを好むようになっていくのである。
また近年のボクシング界は世界的な傾向として有象無象の団体乱立の様相を呈しており、以前だったらアジアには東洋タイトルのみだったのが、今ではタイのプロモーターに強い団体・フィリピンのボクサーを優先的に囲う団体など地域タイトルの威厳が急降下しているのである(昔の東洋タイトルで関光徳は今の本田圭佑に匹敵していたと筆者の叔母は言っていたが、今の東洋タイトルは影響力はかけらもないのである)。
では東洋タイトルに全く価値がないのかと言うと一概にそうとも言えない。と言うのもノンタイトルの時は無気力試合をする東南アジアの噛ませ犬のボクサーも、選手によっては東洋タイトルがかかると別人のようなやる気を出す選手もいるのである。
その理由は「お金」。近年は東南アジアも経済発展してきたと言うが、それでも日本と東南アジアの通貨価値の差は20倍と言われ(日本王者のファイトマネーが一試合30万円から数百万円というが数百万貰える王者は稀。基本的に60~80万円ぐらいが相場で東洋王者も同じくらい・推定)、東洋タイトルを獲る→日本のプロモーターに呼ばれる(自分が王者だからファイトマネーの交渉も強気になれる)→日本で防衛する→世界ランキングも上がり、また別のプロモーターがその東洋王者を呼ぶ、という図式が成立する。その為東洋王者を取ったフィリピン人の中には、日本の試合枯れしたボクサーよりも頻繁に後楽園ホールで試合する選手も出てくるのである(この図式は日本のボクシングファンの中では常識である)。
あと東洋王者がボクシング界における役割としては、軽量級(フライ級やバンタム級)のような軽い階級では影響力を発揮するが、ミドル級やヘビー級のような重量級では世界的に競争相手が多く、中々世界戦線に入り込めないのが現実である(東洋王者ではないがミドル級の村田諒太は別格)。
こうしてざっと東洋タイトルについて見てみた訳だが、名前は知っていても実態が分かりにくいボクシング界について少しでも理解してもらえれば幸いである。
参考文献 R25 2008年6月19日号
冒頭のタイトルにもあるように東洋タイトルというものを今回は考えてみたいと思うが、一般の方は日本より東洋の方が影響力があると考えがちだが、意外とボクシング界の中ではそう単純な話でもないのである。
というのも1990年代に加盟国持ち回りのコミッションでフィリピンのコミッションが東洋タイトルを管轄した時に、同国の管理が杜撰でタイトル挑戦資格のないボクサーにまでランキングやタイトル挑戦の機会を与え、コアなボクシングファンに顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまったのである。
その為モチベーションや意識の低い外国人ボクサーよりも日本人同士のマッチメークの方がファンに好まれる傾向が高まった。また沢木耕太郎のボクシングノンフィクション小説「一瞬の夏」でもあったが日本タイトルの場合は王者も挑戦者も日本人で、後楽園ホールの高い客席のチケットも赤青両コーナーも捌ける(さばける)が、東洋タイトルの場合は基本的に片方のコーナーは外国人なので、チケットの捌ける絶対数が違ってくるのである。その為プロモーター(試合の主催者)は日本タイトルを好むようになっていくのである。
また近年のボクシング界は世界的な傾向として有象無象の団体乱立の様相を呈しており、以前だったらアジアには東洋タイトルのみだったのが、今ではタイのプロモーターに強い団体・フィリピンのボクサーを優先的に囲う団体など地域タイトルの威厳が急降下しているのである(昔の東洋タイトルで関光徳は今の本田圭佑に匹敵していたと筆者の叔母は言っていたが、今の東洋タイトルは影響力はかけらもないのである)。
では東洋タイトルに全く価値がないのかと言うと一概にそうとも言えない。と言うのもノンタイトルの時は無気力試合をする東南アジアの噛ませ犬のボクサーも、選手によっては東洋タイトルがかかると別人のようなやる気を出す選手もいるのである。
その理由は「お金」。近年は東南アジアも経済発展してきたと言うが、それでも日本と東南アジアの通貨価値の差は20倍と言われ(日本王者のファイトマネーが一試合30万円から数百万円というが数百万貰える王者は稀。基本的に60~80万円ぐらいが相場で東洋王者も同じくらい・推定)、東洋タイトルを獲る→日本のプロモーターに呼ばれる(自分が王者だからファイトマネーの交渉も強気になれる)→日本で防衛する→世界ランキングも上がり、また別のプロモーターがその東洋王者を呼ぶ、という図式が成立する。その為東洋王者を取ったフィリピン人の中には、日本の試合枯れしたボクサーよりも頻繁に後楽園ホールで試合する選手も出てくるのである(この図式は日本のボクシングファンの中では常識である)。
あと東洋王者がボクシング界における役割としては、軽量級(フライ級やバンタム級)のような軽い階級では影響力を発揮するが、ミドル級やヘビー級のような重量級では世界的に競争相手が多く、中々世界戦線に入り込めないのが現実である(東洋王者ではないがミドル級の村田諒太は別格)。
こうしてざっと東洋タイトルについて見てみた訳だが、名前は知っていても実態が分かりにくいボクシング界について少しでも理解してもらえれば幸いである。
参考文献 R25 2008年6月19日号