先日は日本の球場について様々な問題や試行錯誤の過程を色々述べた訳であるが、前回のこのテーマが好評だったのとまだ筆者(独眼鉄)自身が書き足りない所もあって、前回の続きを書くことにした。
前回は東京ドームとQVCマリンフィールドについて述べた訳であるが、前にも言ったようにメジャーのスタジアムは地元自治体が所有者で使用料が無料(もしくは雀の涙の金額)であるのに対し、日本の球団の場合、球場の所有者はまちまちで使用料もまちまちである。
そもそもプロ野球の場合、12球団の中で自前の球場を持っている球団は阪神・中日・埼玉西武・オリックス・そして870億円(!)で福岡ドームを買収した福岡ソフトバンクの5球団である。
プロ野球の場合だと球団が自前の球場を持つことは球団の利潤の増加に繋がる。その成功例が阪神タイガースと阪神甲子園球場との関係である。
阪神甲子園球場(以下甲子園)は1935年にタイガースの球団発足時から資本提携している関係で、甲子園自体が高校野球やプロ野球で幾多の名勝負を刻んできた日本一の歴史と伝統を持つ球場で、タイガースはその甲子園と戦前から深い繋がりがあり、他の自前の球場を持つ球団よりも両者の結束力は強固である。
その甲子園も長い伝統はあるが当然のことながら老朽化の波がきて、観客席のリニューアルにも乗り出した。リニューアル時に内野席を19000席から16500席に減らし、席に東芝やみずほ銀行などの大手企業のネーミングライツを獲得し甲子園の(すなわち球団の)利益の増加に繋げた。座席数を減らしたことによって(メジャーの球場同様)席に希少価値が生まれ甲子園の利益はむしろ増加した。
しかし巧みにネーミングライツで稼ぐ甲子園もこの球場だけは球場そのもののネーミングライツは「あり得ない」話である。どんな日本の大企業でも例えば座席の命名権を買った「阪神東芝甲子園球場」とか「阪神みずほ銀行甲子園球場」などとするとは思えないし(前の2社の名前を汚す気は毛頭ないが彼らもそんなことはしないだろう)、またやっても誰も幸せにならない。
このように球団と球場が強固な関係を築くと双方がWin-Winの関係になる訳だが、どこの球団もそうな訳ではない。自前の球場のない球団は大変である。
筆者がその手の球団で思い出すのは横浜DeNAベイスターズと横浜スタジアム(以下ハマスタ)の関係である。それまで自前の球場を持たない球団は、球場に収入があってもその利潤が球団まで届かず、結果として球団は自前で育てた看板選手をFAで放出して選手の流出に繋がり、結果球団の弱体化になり球場にも集客力が落ちてくるのであった。
DeNAの場合はその図式が顕著に現れた例であり、事実この球団は2000年代は優勝はおろかAクラスにも入るのも難しかった(弱体化の原因は球場だけでなく、前の親会社の怠慢もあって球場だけ責めるのも酷だが)。
そうした逆風の中で親会社も変わったDeNAとハマスタも関係が変化した。それまで球団は球場にチケット収入の25%を納めていたのが、2012年の両者の契約更改ではそれが約半分の13%に減額された(その代わり球場がDeNAに支払う球団強化費の3億円は廃止)。他にも球場の座席や店内売店、選手ロッカールーム、電光掲示板の改修も決まった(ハマスタとしても球団の身売り時に球団の新潟移転の情報もあり、球場サイドに危機感が生まれたのかもしれない)。
こうしてここまで球団と球場の関係を述べてきた訳であるが、強い球団を作る為には球場のバックアップ(援護射撃?)もかなり重要なのである。
参考文献 Sport Management Review 2008 vol.11 稼ぐスタジアム。稼げないスタジアム。
プロ野球お金にまつわる100の話 凡田夏之介(グラゼニ) 週刊ベースボール 編著 2014年 ベースボールマガジン社
前回は東京ドームとQVCマリンフィールドについて述べた訳であるが、前にも言ったようにメジャーのスタジアムは地元自治体が所有者で使用料が無料(もしくは雀の涙の金額)であるのに対し、日本の球団の場合、球場の所有者はまちまちで使用料もまちまちである。
そもそもプロ野球の場合、12球団の中で自前の球場を持っている球団は阪神・中日・埼玉西武・オリックス・そして870億円(!)で福岡ドームを買収した福岡ソフトバンクの5球団である。
プロ野球の場合だと球団が自前の球場を持つことは球団の利潤の増加に繋がる。その成功例が阪神タイガースと阪神甲子園球場との関係である。
阪神甲子園球場(以下甲子園)は1935年にタイガースの球団発足時から資本提携している関係で、甲子園自体が高校野球やプロ野球で幾多の名勝負を刻んできた日本一の歴史と伝統を持つ球場で、タイガースはその甲子園と戦前から深い繋がりがあり、他の自前の球場を持つ球団よりも両者の結束力は強固である。
その甲子園も長い伝統はあるが当然のことながら老朽化の波がきて、観客席のリニューアルにも乗り出した。リニューアル時に内野席を19000席から16500席に減らし、席に東芝やみずほ銀行などの大手企業のネーミングライツを獲得し甲子園の(すなわち球団の)利益の増加に繋げた。座席数を減らしたことによって(メジャーの球場同様)席に希少価値が生まれ甲子園の利益はむしろ増加した。
しかし巧みにネーミングライツで稼ぐ甲子園もこの球場だけは球場そのもののネーミングライツは「あり得ない」話である。どんな日本の大企業でも例えば座席の命名権を買った「阪神東芝甲子園球場」とか「阪神みずほ銀行甲子園球場」などとするとは思えないし(前の2社の名前を汚す気は毛頭ないが彼らもそんなことはしないだろう)、またやっても誰も幸せにならない。
このように球団と球場が強固な関係を築くと双方がWin-Winの関係になる訳だが、どこの球団もそうな訳ではない。自前の球場のない球団は大変である。
筆者がその手の球団で思い出すのは横浜DeNAベイスターズと横浜スタジアム(以下ハマスタ)の関係である。それまで自前の球場を持たない球団は、球場に収入があってもその利潤が球団まで届かず、結果として球団は自前で育てた看板選手をFAで放出して選手の流出に繋がり、結果球団の弱体化になり球場にも集客力が落ちてくるのであった。
DeNAの場合はその図式が顕著に現れた例であり、事実この球団は2000年代は優勝はおろかAクラスにも入るのも難しかった(弱体化の原因は球場だけでなく、前の親会社の怠慢もあって球場だけ責めるのも酷だが)。
そうした逆風の中で親会社も変わったDeNAとハマスタも関係が変化した。それまで球団は球場にチケット収入の25%を納めていたのが、2012年の両者の契約更改ではそれが約半分の13%に減額された(その代わり球場がDeNAに支払う球団強化費の3億円は廃止)。他にも球場の座席や店内売店、選手ロッカールーム、電光掲示板の改修も決まった(ハマスタとしても球団の身売り時に球団の新潟移転の情報もあり、球場サイドに危機感が生まれたのかもしれない)。
こうしてここまで球団と球場の関係を述べてきた訳であるが、強い球団を作る為には球場のバックアップ(援護射撃?)もかなり重要なのである。
参考文献 Sport Management Review 2008 vol.11 稼ぐスタジアム。稼げないスタジアム。
プロ野球お金にまつわる100の話 凡田夏之介(グラゼニ) 週刊ベースボール 編著 2014年 ベースボールマガジン社