少し間はあるが、前回はイングランドはマンチェスターUのスタジアム戦略を考察したので、今回はそれと対比してアメリカのスタジアム戦略を考えて見ようと思う。

アメリカのプロスポーツの世界で、スタジアム問題が沸き起こってきたのは1960~1970年代のメジャーリーグのエクスパンション(リーグ拡張)により新しいスタジアムの需要が全米各地で出てきたことである。そうしたことから各地でスタジアム建設ラッシュが始まったのである(第1次スタジアム建設ラッシュ)。

この当時アメリカでは(Jリーグでいう「専スタ」ではなく)野球とアメフト(NFL)との兼用の多目的スタジアムにして、スタジアムの収容人数も6万人と多い施設を各地に建設した。古代ローマのコロシアムのような左右対称形をしているスタジアムと呼ばれている施設である。

しかしこの手のスタジアムというのは一言で言うと「失敗」であった。座席のフィールドに対して角度が悪い(座席がフィールドの中心を向いている)、ファウルグラウンドが広い、収容人数が多すぎる、といった兼用スタジアム特有の欠点に加えて外観が人工的で味気ない、コンコースに出ると試合が見られない、コンコースが狭い、売店やトイレが少ないといった問題も生み出した(またNFLは一試合6万人に対しMLBは3万人と集客力に違いがあり、席が余ると「後で買うからいいや」となりチケットが捌けなくなる)。

そうした失敗作からそれらのスタジアムが老朽化してきた1990年代から第2次スタジアム建設ラッシュが生まれた。この時設立したスタジアムは広いコンコースと無数の売店、スタジアム1階にはパブやレストラン・オフィシャルショップがあり(2階には球団事務所)、座席数も減らしチケットに希少価値を与え、子供が試合に飽きても遊べる工夫もなされていて、本当の意味の「ボールパーク」なのである。

こうしたスタジアムの建設には地元自治体の税金によって賄われ、アメリカの某スタジアムでは建設費用を2億3500万ドルかかり、うち1億9700万ドルに税金が投入された。

こうして前回のマンUと今回のメジャーのスタジアムを比較して、今のJクラブなど新たなスタジアムを作る為のポイントをまとめて見よう。

①スタジアムは兼用ではなく専用で…スタジアムというのは野球でもサッカーでも兼用の施設を作ると結局のところ「中途半端」で「どっちつかず」になり結局野球もサッカーも他の競技も見づらくなり、結果スタジアムの集客力の低下に繋がる(Jなら基本陸上との兼用はしない)。

②日本の大都市なら立地に妥協しない…もし東京に第4のJクラブができたと仮定して都内にスタジアムを設立することになれば、その関係者に「立地だけは妥協するな」と言いたい。なぜなら筆者(独眼鉄)が愛するJ2ジェフ千葉のフクアリも最寄り駅から徒歩8分と好立地で千葉市民からいつでも行ける距離なので(少なくとも成績は別にして)集客しやすいスタジアムになったのである。不況とはいえ世界有数の地価の東京で妥協するなという方が難しいかも知れないが、東京23FCやスペリオ城北といった未来の第4のJクラブにはJリーグの100年構想のように、未来を見据えたスタジアム設計をお願いしたい。

③収容人数はほどほどに…メジャーの話の所でも言ったが多すぎる収容人数というのは(Jだと味スタ)、結果としてチケットの価値が薄れてチケットが売れなくなる事態に陥る。そうしたことを防ぐ為にもスタジアムは(Jなら)2万人ぐらいが適正である。

こうして今まで海外のスタジアムからこれまでのスタジアムの歴史から、これからのスタジアムの方向性を考察してみたが、これからも新しいJクラブが生まれるだろうがそうした時もこういったスタジアムの在り方を記憶の片隅に置いて貰いたい。

参考文献 ヤンキースのユニフォームにはなぜ選手の名前がないのか? 鈴木友也 2014年 日経BP社