筆者(独眼鉄)は中学生時代から柔道を始めて階級制の格闘技の世界で末席を汚すようになってはや20年である。長くだらだらとこの世界(柔道とボクシング)にいる割には全く強くもなってないし、凄くも偉くもなっていない。今更どうしろということもあるが、今回は階級制格闘技の宿命とも言うべき減量について一つ話をしたい。

前述の通り筆者は柔道とボクシングの経験者なのであるが、ぶっちゃけ減量とは何キロぐらいするものなのかと言えば、自分が経験した部類ならざっくり10キロぐらいである。ただボクシングの場合は筆者はぺーぺーの練習生止まりなので、試合の減量というのは経験したことはないことを先に言っておく。

まず柔道の場合は減量と試合時の計量といっても、計量自体(それほど精密に計れない)デジタル式の体重計であったし、試合によっては柔道着を着ての計量もあったのでやはりボクシングのそれとは体重に対する縛りは緩やかだったのかも知れない。

しかしそれでも上のレベルにいけば精密に計るかも知れないし金メダリストの吉田秀彦氏もバルセロナの時に10キロぐらいの減量が必要で、(先輩の)古賀稔彦氏と現地で減量の為の乱取りをしたと後のインタビューでおっしゃっていた(余談だがアマチュアレスリングでも減量は5キロから10キロぐらいだと言う)。

やはりそして減量といって外せない競技はボクシングであろう。ボクシングの場合(基本的にプロは)デジタル式の体重計ではなく10グラム単位まで計れる天秤で使う重りのようなかなり正確な計りを使って計量する。世界タイトルに限らずどのカテゴリーのタイトルやノンタイトルの試合でも、自分の陣営と対戦相手の陣営が試合をする国(米国や豪州の場合は州)の管轄するコミッションが前述のような正確な計りできっちりとボクサーの体重を計る。そして対戦相手も本気なので(例外もいるが)ボクサーの体重によって計りの針が微かに動いてもクレームをつけるセコンドもいる(現実に計量の現場に立ち会ったことはないが)。

そしてボクサーの減量というのは、これは選手によって千差万別である。基本的にボクサーの減量はきついイメージがあるが、極度に水分を抜く減量は今の時代は健康管理の観点からあまり多くはない。かなり例外として元WBCフェザー級王者の越本隆志氏が減量が2キロだったと専門誌のインタビューで話していたが、こちらの世界でも減量は大体10キロぐらいであったと言う。

ただボクサーにも色々あって九州のジム所属の元日本王者が選手としてのスペックはそれなりに高い選手だったが、コミッションに登録しているリングネームとは別に裏のリングネームもあった。その名も「フードファイター」であった。その選手は試合のない時は美人の愛妻が作る手料理を半端じゃない量を食べて、そして試合が決まり減量に入ると一切の欲望を満たすような食生活を止めて修行僧のような生活になる。減量する量は20キロ(!)にもなり、キャリアの後半は体重が落ちづらくなり階級を上げた後その選手は引退した。

と、ここまで減量について書いてきたが最後にボクサーの計量後の食事について書きたい。きつい減量を終えたボクサーは試合前(計量直後)はどか食いするイメージがあるが意外とそうでもない。結局試合に勝てないと意味はないので胃袋に負担をかけないような食事が主流で、畑山隆則氏は計量後にフルーツゼリーを食べたというし具志堅用高氏は計量後はアイスクリームが楽しみだったという(最後の試合前に計量後のアイスクリームが食べられなかったので負けたという話もあった)。他にも大塚の角海老ジムは自主興行の計量後にジムの会長が作ったおじやが振る舞われるとも言う。

階級制格闘技の宿命でもある減量。その中には色々な勝つ為のエピソードがある。