先日はサッカー選手の(主としてブラジル人選手の)帰化問題について考えて見た訳だが、今回は帰化についてもう少し掘り下げて考えてみたい。

前回もワールドカップ(W杯)のサッカー選手の帰化した選手のことを書いたが、少し古いが世界的な帰化したブラジル選手を考えてみたい。今回のW杯ブラジル大会でGLで退場処分されたポルトガル代表のぺぺもブラジルから帰化した選手であるし、2003年に帰化し2004年の欧州選手権で活躍したデコ(ポルトガル代表)もブラジルから帰化した選手である。他にもエドゥワルド・ダ・シルヴァ(クロアチア代表)、シーニャ(メキシコ代表)、ドナト(スペイン代表)などがブラジルから帰化した世界的サッカー選手の例である。

こうしてざっくりとサッカー選手の帰化について考えてみたが、国籍を変えることをいとわないブラジル系の選手に対して(それでもラモスのように相当悩んだ人もいるが)、コリアン(韓国系)の選手は国籍に自身のアイデンティティーを重視するのでおいそれと変えられない民族もいる(それでも李忠成のような日本に帰化する選手もいるが)。

今回は様々なスポーツで帰化する選手の問題を考えたかった訳だが、少し古いが2008年の北京五輪の卓球で欧州やアフリカ代表の選手がアジア系(東洋人)の顔立ちなのに出場していることが目立った。その多くは中国から帰化した選手だと言う。北京五輪の女子団体ではシンガポールで同国独立後の初の五輪のメダルを獲得したが、この中でシンガポールに5年以上滞在していたのはリ・ジャウェイ1人だったという。

シンガポールが五輪のメダルが取れなかったことは筆者のブログ(2014年4月6日号・スポーツの現金化・その94・シンガポールの苦悩)に載っているし、中国の卓球が(ブラジルのサッカーのように)王国になった過程もブログ(2014年3月11日号・スポーツの現金化・その81・国際卓球連盟とウルグアイサッカー協会)に載っているのだが、前回言ったようになかなか国際大会の出場機会に恵まない中国人選手とメダルが欲しい国との利害が一致して中国人の(言葉は悪いが)「傭兵」のように簡単に国籍を変えるパターンもある(この図式は前回のブラジルのサッカーとかなり似ている)。

ただシンガポールの場合国家を作った人間がリュー・クァンユー初代首相で彼は中国客家族出身なので、自分のルーツの国の人間を帰化させて問題なのかと言われると苦しいところもある。

他にも陸上でオイルマネーのあるカタールが国威高揚の為にアフリカ系の選手を帰化させるケースも増えていているようである。

こうした流れを受けて国際卓球連盟は帰化選手に対して厳しい規制を打ち出した。帰化した選手が帰化した国に全くいない為、その国の卓球の普及やレベルの向上に貢献できなければ規制は仕方がないようである。

こうして今回はアスリートの帰化について考えてみたが、日本のブラジル系選手のように日本を第二の祖国として骨を埋める(うずめる)覚悟のある選手もいれば、その国にほとんど関わりのない選手もいる。あまり帰化選手が増えると国際大会の意義も薄れる。スポーツが現金化されビジネスになっていく上で国籍の問題も考えなくてはならないのである。

参考文献 R25 2008年1月24日号 同2008年10月2日号