今月に入ってワールドカップモードの日本列島。梅雨時の熱気も継ぎ足されたように日本中が代表を応援していて、筆者(独眼鉄)もその流れに乗ってサッカーネタのブログを書き続けてきたが、さすがにネタ切れ(サッカーネタに関して)になってきたので今回は別の競技のことを(アクセス数は減るだろうが)書こうと思う。

今回のタイトルに「リングの内需とリングの外貨」と言ったが、今の日本のボクシング界は海外遠征が以前とは比べ物にならない位増えている。

こうやってブログを更新している時も東京のジム所属の日本ランカーがフィリピン・セブ島の空港に到着した写真がボクシング協会の携帯サイトにアップされ、同じサイトの試合日程の欄にもフィリピンの他に韓国やメキシコのリングに上がる選手がいる。

ここ何年かの日本人ボクサーの海外での活躍は目を見張るものがある。元WBA暫定・WBCミニマム級王者の高山勝成が敵地メキシコで最近日本でも認可されたメジャー団体IBFのミニマム級タイトルを獲得し(平仲明信以来)の敵地での王座奪取に成功し、元WBA暫定スーパーウェルター級王者の石田順裕も敵地アメリカで世界ランキング1位の強豪を初回KOした。WBCスーパーバンタム級名誉王者(当時)の西岡利晃も敵地メキシコで逆転KO防衛を果たした。

こうやって日本のトップ選手が次々結果を出しているように見えるが、勿論その一方で多くのボクサーが敗れている。

こうして日本のボクサーが海外に行くのは日本ボクシング界の構造的な問題や興行面やビジネス面での問題が日本人ボクサーの海外転戦を促進させている。それは日本のボクシング界は他のスポーツ同様ムラ社会というか、後楽園ホールのチケットの値段設定が皆同じなのである。2000年代後半は最低3000円スタートだったが(帝拳ジムの1500円チケットも当時あったが)、今は安くても4000円だったり世界戦でもないのに5000円のチケットも今の後楽園ではザラである(2013年9月30日号の筆者のブログ・スポーツの現金化・その21・ボクシング界のスタグフレーション参照)。

只でさえ高い格闘技のチケットに内容が乏しい、ボクシング界のスキャンダルもあった。それまでの2-8の法則(2割の顧客が売り上げの8割を出す法則のこと)の2割の顧客がボクシング界からどんどん離れていって、国内の興行のチケットセールスの赤字が膨らみ興行そのものが立ち行かなくなっているように見える。

この現象はボクシング界という狭い世界のみならず日本社会全体に当てはまる気がする。TPPの問題もそうだが国内の産業を保護貿易(高い関税=ボクシングなら一律高いチケット代)で守る一方で、日本社会全体をムラ社会で皆横並びで「出る杭は打たれる」「KY」みたいな他者を揶揄することを「協調」と考える。しかし今の日本社会はグローバルと言われて久しく、国内産業を保護しても内需が若年層の人口が減少していて効果は薄く、かといって自分たちが下剋上のグローバル世界で戦える武器も戦い方もない。ボクシング界も内需に期待できない以上海外に打って出るしかなくなったのもそうだが、この状況は日本社会全体にも似ている気がした。