先日はメジャー審判に挑戦している日本人マイナーリーグの審判のことを書いたが、審判の世界もメジャーとマイナーには天と地ほどの待遇の格差(日本の格差は格差にならないぐらい)を感じてもらったと思うが、メジャーリーグの審判と言うのも最大級の情熱と衿恃(きょうじ)を持って行動する職業であることも知る必要がある。
現在野球ではワールドベースボールクラシック(WBC)が開催されるが、この大会に派遣されていた公式審判団に2006年の第1回大会から審判団のジャッジメントに日本(他国も)から多くのクレームが届いているのも筆者(独眼鉄)は知っている。
しかし前述の平林岳主審はWBC審判団の1人の(第1回大会日本対アメリカ戦の八回表の西岡剛のタッチアップ時の誤審疑惑の)ボブ・デービットソン審判(以下・ボブ審判)の経歴について日本の報道に大きな誤りがあることを指摘している。
まずボブ審判はメジャーリーグをクビになったと言うが、ボブ審判はメジャーは辞めたがクビではないと言う。ボブ審判は1999年メジャー審判団によるストライキをしました。それは労使交渉のそれではなく、審判としての職務を全うすることのためのストライキであった(この件に限った話ではないが日本のマスコミは適当な感情論の取材で読者を誘導する節がある。注意が必要だ)。
きっかけはトム・ハリオンという審判がメジャーで審判していた頃、自分の判定に監督が猛抗議をしてきたことがあったことである。監督も審判も自分の生活と職務に対する誇りを賭けたガチの勝負になる。しかし審判としては猛抗議する監督に一歩でも引くと審判としての威厳が保てない。この時の抗議に来た監督に対する態度や行動は間違っていないという主張のためのストライキ行動であった。
最終的にこのストライキのために22人のメジャー審判がこの富と名声・名誉のある仕事を自分の職務への衿恃のために(クビではなく自主的に)辞めたのである。この22人のメジャー審判は日本円にして年俸3000万円クラスの報酬を審判という仕事の衿恃のために棄て、年俸100万円に満たない審判学校経由の上にマイナーリーグの教育リーグ(日本の六軍や七軍に相当)から「もう一度」やり直すところからスタートするのであった。ハリオン審判と行動を共にした22人のメジャー審判の1人が前述のボブ審判である。
ボブ審判は七軍の教育リーグからのやり直しを希望した。普通の人間なら「またあの下積みをやんのかよ…」と凹むものである。当たり前である。何度も繰り返しことだがメジャーとマイナーの格差というのは日本のメディアが言う生ぬるい格差社会とは比較ならない格差がある。しかしボブ審判はその荒行のような下積み「好きな審判をやる為だから」と言ってやり直しを希望した。年齢的に教育リーグの二人制審判は(本来は四人制)体力的にも厳しく苦しくないはずがない。それでもボブ審判はやり直した。またペアを組んでる(審判は二人一組で行動する)マイナー審判がイリノイからコロラドまでの1000キロの移動を(ボブ審判は飛行機で移動できるのに)わざわざ(本来ならかなり経験が下の)相方の審判に合わせて交代の運転を買ってでるという気遣いもできる人間だと言う。
WBC第1回大会でこの審判はメジャー審判から選出されるはずだったが条件が折り合わずメジャー審判が出場せず、代わりに選ばれたのが「バケーション・アンパイヤ」と呼ばれるメジャー審判の休暇時の間に審判を担当する審判である。バケーション・アンパイヤは籍こそマイナーであるが、メジャーの試合を裁ける審判としての立場はメジャーのそれと同等である。ボブ審判はこのバケーション・アンパイヤだったのである。彼は教育リーグからやり直してメジャーと同等の審判となり、前述のトム・ハリオン審判もメジャー審判を辞めた後、年俸数千万円の収入から1日10~20ドルのミールマネー(食事代)の教育リーグからやり直して実質メジャーまで再び上がって、第1回WBC大会の決勝の日本vsキューバ戦の主審を務めた。我々は何の競技でも審判へのリスペクトが必要なのである。
最近Jリーグやサッカーの代表の試合で審判が少しでも判断ミスをすると「そこまで言わなくてもいいだろ!」というくらい烈火のようなバッシングの嵐になる。経験値のあるサッカーの国際大会でさえそんな状況なのに、まだ生まれて間もないヨチヨチ歩きのWBCで審判に対してどうこう本質的なモノを歪めてまで報道する日本のスポーツメディアには辟易する。
審判に対する敬意がない者が競技の本質を見抜くことは出来ない。
参考文献 パ・リーグ審判、メジャーに挑戦す 平林岳 (ひらばやし・たけし) 光文社新書 2007年
現在野球ではワールドベースボールクラシック(WBC)が開催されるが、この大会に派遣されていた公式審判団に2006年の第1回大会から審判団のジャッジメントに日本(他国も)から多くのクレームが届いているのも筆者(独眼鉄)は知っている。
しかし前述の平林岳主審はWBC審判団の1人の(第1回大会日本対アメリカ戦の八回表の西岡剛のタッチアップ時の誤審疑惑の)ボブ・デービットソン審判(以下・ボブ審判)の経歴について日本の報道に大きな誤りがあることを指摘している。
まずボブ審判はメジャーリーグをクビになったと言うが、ボブ審判はメジャーは辞めたがクビではないと言う。ボブ審判は1999年メジャー審判団によるストライキをしました。それは労使交渉のそれではなく、審判としての職務を全うすることのためのストライキであった(この件に限った話ではないが日本のマスコミは適当な感情論の取材で読者を誘導する節がある。注意が必要だ)。
きっかけはトム・ハリオンという審判がメジャーで審判していた頃、自分の判定に監督が猛抗議をしてきたことがあったことである。監督も審判も自分の生活と職務に対する誇りを賭けたガチの勝負になる。しかし審判としては猛抗議する監督に一歩でも引くと審判としての威厳が保てない。この時の抗議に来た監督に対する態度や行動は間違っていないという主張のためのストライキ行動であった。
最終的にこのストライキのために22人のメジャー審判がこの富と名声・名誉のある仕事を自分の職務への衿恃のために(クビではなく自主的に)辞めたのである。この22人のメジャー審判は日本円にして年俸3000万円クラスの報酬を審判という仕事の衿恃のために棄て、年俸100万円に満たない審判学校経由の上にマイナーリーグの教育リーグ(日本の六軍や七軍に相当)から「もう一度」やり直すところからスタートするのであった。ハリオン審判と行動を共にした22人のメジャー審判の1人が前述のボブ審判である。
ボブ審判は七軍の教育リーグからのやり直しを希望した。普通の人間なら「またあの下積みをやんのかよ…」と凹むものである。当たり前である。何度も繰り返しことだがメジャーとマイナーの格差というのは日本のメディアが言う生ぬるい格差社会とは比較ならない格差がある。しかしボブ審判はその荒行のような下積み「好きな審判をやる為だから」と言ってやり直しを希望した。年齢的に教育リーグの二人制審判は(本来は四人制)体力的にも厳しく苦しくないはずがない。それでもボブ審判はやり直した。またペアを組んでる(審判は二人一組で行動する)マイナー審判がイリノイからコロラドまでの1000キロの移動を(ボブ審判は飛行機で移動できるのに)わざわざ(本来ならかなり経験が下の)相方の審判に合わせて交代の運転を買ってでるという気遣いもできる人間だと言う。
WBC第1回大会でこの審判はメジャー審判から選出されるはずだったが条件が折り合わずメジャー審判が出場せず、代わりに選ばれたのが「バケーション・アンパイヤ」と呼ばれるメジャー審判の休暇時の間に審判を担当する審判である。バケーション・アンパイヤは籍こそマイナーであるが、メジャーの試合を裁ける審判としての立場はメジャーのそれと同等である。ボブ審判はこのバケーション・アンパイヤだったのである。彼は教育リーグからやり直してメジャーと同等の審判となり、前述のトム・ハリオン審判もメジャー審判を辞めた後、年俸数千万円の収入から1日10~20ドルのミールマネー(食事代)の教育リーグからやり直して実質メジャーまで再び上がって、第1回WBC大会の決勝の日本vsキューバ戦の主審を務めた。我々は何の競技でも審判へのリスペクトが必要なのである。
最近Jリーグやサッカーの代表の試合で審判が少しでも判断ミスをすると「そこまで言わなくてもいいだろ!」というくらい烈火のようなバッシングの嵐になる。経験値のあるサッカーの国際大会でさえそんな状況なのに、まだ生まれて間もないヨチヨチ歩きのWBCで審判に対してどうこう本質的なモノを歪めてまで報道する日本のスポーツメディアには辟易する。
審判に対する敬意がない者が競技の本質を見抜くことは出来ない。
参考文献 パ・リーグ審判、メジャーに挑戦す 平林岳 (ひらばやし・たけし) 光文社新書 2007年