昨日(2014年5月7日)は筆者(独眼鉄)は家のテレビで大阪の世界タイトルマッチの中継を見ていた。その解説席に井岡一翔選手が挑戦した同じ階級(団体は違うが)の世界王者の内藤大助氏がいた。内藤氏もまたこの日のチャンピオンと同じタイ人の絶対的の世界王者を攻略して世界王者に登りつめた男だが、内藤氏の2007年の世界挑戦時に興行を打つ時にジムが金銭的に厳しく、世界挑戦の為に内藤氏の所属ジムである宮田ジムがホームページなどで興行の為の募金を募ったのである。その興行を打つ為の費用は4000万円(!)。勿論宮田ジムも元々軽量級の4回戦ボクサーの育成力は新興のジムながら定評があり「4回戦ボクサーが宮田ジムでデビューできて、そのボクサーが負けたらその敗戦はボクサー自身の責任」と言われるほど、宮田ジムは育成から業界有数のジムにのしあがっていき、強豪ボクサーが多数いるジムになって言った。

しかし後楽園ホールでの地場の自主興行を打つだけなら宮田会長には造作もないだろうが、世界戦は(宮田ジムに限らず)やはり別格であった。

内藤氏の最初の敵地での世界挑戦は1分ぐらいで初回KO負けで、この時点で内藤氏はボクサーとしての商品価値はなくなっていた。しかし陣営は粘り強く交渉し再戦を東京でやるも判定負け。そして内藤氏と宮田ジムは三度目の正直で再々戦で冒頭の世界挑戦にこぎつけて、その時世界戦の興行の資金を募金までしてかき集めたのである(三度目の挑戦が成功した後、募金に賛同してくれた支援者の方々には後のスターになる内藤氏直筆の礼状が届いたらしい)。

この時の募金は災害や病気の子供の為の募金ではなく、単に興行を打つ為の運営資金集めの為の募金である(余談だが内藤氏は世界王者になった後、東日本大震災などの募金にも協力している)。プロスポーツの試合開催の為の運営費用の捻出(ねんしゅつ)は想像以上に過酷な世界である。

来月(2014年6月)からはブラジルW杯が始まるが、世界最大規模のスポーツイベントであるサッカーでさえ、国内リーグでチームの運営資金や試合開催の費用で苦しんでいるチームは多数ある。JリーグではJリーグクラブライセンス制度というものがあり、財務では3年連続債務超過(赤字)のクラブはクラブライセンス(いわばJクラブとしてチームを運営する為の許可証)が交付されず、下部リーグへの降格を言い渡される厳しい制度である。2012年まで3年連続赤字だったクラブは横浜(F・マリノス)・名古屋・神戸・群馬・富山があり、この内ザスパクサツ群馬は債務超過額は5770万円でクラブは8500万円の資金調達を計画し、また試合時の募金などで(一般募金は1000万円が目標額)資金を賄い、その後クラブは寄付金などのメドはついたと発表し、クラブライセンスは交付される方向であるという。

格闘技であれ球技であれ、プロスポーツとしてトップレベルで興行を維持する為にはとてつもない労力と精神力とお金が必要なのだと感じた。

参考文献 サッカーダイジェスト 2014年5月13日号 2014年版 サッカーとお金の話