スポーツの現金化 (その91・高卒3年、大卒2年は面倒見る)

冒頭のタイトルはJリーグの世界の暗黙の了解、一種の不文律である。野球でもサッカーでもそうだが野球だったら松坂大輔や田中将大、サッカーなら冬の選手権得点王のような資質＋知名度のあるような選手でない限り、基本的に高卒1年目から即戦力になるような選手はいないのが普通である(いたらそれぞれのスポーツメディアがその選手を大々的に取り上げる)。

その為Jリーグの世界では高卒1年目の選手の練習は(今年のジェフならオナイウ阿道あたりが)「陸上部になる」(走ってばかり)というくらい、まずその高卒の選手にテクニックや戦術理解度云々以前に、プロの(Jの)ピッチに適応出来るだけのフィジカルを着けさせるのが高卒1年目の「仕事」である。

その一方で大卒というのは基本的に即戦力である。極端な話デビュー1年目から役に立ってナンボの立場が大卒の選手である。その為大卒の選手の場合、選手本人も監督・コーチもフロントもファン(サポーター)も大卒の選手には入団の記者会見の場から残された時間が少ない。それがプロスポーツの場合、そういう考え方が非情だが常識な世界なのである。

しかも只でさえ苛酷で非情なのに最近では冒頭のタイトルのような一種の「余命」のような不文律すら壊れつつあるのが現実である。サッカーダイジェストの2014年1月4日・17日合併号でトライアウトの記事で20歳で戦力外になりトライアウトに賭けた選手が(早生まれもいたが)4人もいた。今の時代は親会社もスポンサーもファン(サポーター)もメディアも短期的に結果を求めるあまり、このような苛酷過ぎるくらい苛酷なプロスポーツ選手の雇用環境を産み出している。

野球にしたって環境としてはサッカーと似たり寄ったりなところがある。ある元プロ野球選手が引退後に話していたことだが高卒でセリーグの球団に右の大砲としてドラフト3位で入団後、入団4年目に二軍の開幕戦に出場し2本のヒットを打ち、迎えた2戦目に3打数ノーヒット。この結果だけでこの右の大砲は二軍の首脳陣に干されてしまったという。その選手は精神的に腐ってしまった上に、弱り目に祟り目で怪我で戦力外になったというがプロスポーツというのは観客席から眺めているだけではわからないような壮絶な世界のようである。

どんな子供でも(特に男の子は)華やかなプロスポーツの世界に野球だろうがサッカーだろうが憧れるものである。しかしプロスポーツの世界は対戦相手や同僚の夢を食って自分の夢を食い繋ぐ世界である。想像を絶する凄い世界なのである。