筆者(不器用貧乏)は大学時代移民の勉強を卒論のテーマにした。基本的に移民というのは色々いるが、徒手空拳(何も持って無いこと)で海外に行くことが多いので自ずとやれる仕事は限定される。

筆者が主に研究の対象にしたのは華僑であるが華僑には「三把刀(サンバァダォ=三本の刃物)」と言い華僑が移民として働くのにやっていくのに必要な道具と仕事のことを言うのである。「華人社会がわかる本」(山下清海著 2005年 明石書店)では①料理の包丁(コック・広東人)、②洋服の鋏(はさみ、仕立屋・上海人)、③毛(髪)を剃る剃刀(カミソリ、揚州・鎮江人)と華僑はその出身地ごとに徒手空拳で出来る仕事を移住先でやっていっていたのである。

その一方で日系移民は主に農業移民が多かったが(ブラジルで日系移民の農業技術により耕作面積辺りの収穫量が増加したという話もある)、日系の人が南米にいって始めたのがクリーニング店だと言う。何故クリーニング店かと言えばクリーニング店は洗剤とスポンジだけで仕事が始められるからだという。日系移民もまた徒手空拳で右も左もわからない土地で選択肢の無い限られた職種のなかで現地の人の信頼を勝ち取る為に必死だったという(ブラジルのルーラ前大統領は地方からサンパウロに上京して初めてやった仕事が日系移民のクリーニング店だったそうで彼は「japones garantia=日本人という保証」という言葉までいっている。

どんな国でのどんな仕事でもそうだが、何かしら仕事というものはあるのである。先人達の仕事の歴史を見てその場所の中のマイノリティでも仕事で居場所を見つけることは可能である。