以前交渉人の漫画「勇午」で勇午がロシアに行った際、ロシア軍の司令官が科学者に言ったことで「人間の精神を最も苦しめることはなんだ?」と訊いたところ、科学者は「同じ質問を繰り返し延々やるだけです。」と答えた。同じことを延々と繰り返すことが人間の精神にとって最も苦痛なことである。

一方で同じイブニングと言う漫画雑誌で「オールラウンダー廻」という漫画で主人公の格闘家の卵の廻(めぐる)達が打撃の練習の為にワンツーの練習を延々一時間以上やらされるシーンがある。その格闘技の練習は現代だけではなく昔から有効で、「中国雑話 中国的思想」(酒見賢一著 文春新書 2007年)で中国拳法の形意拳は全部の形が5分で終わるようなシンプルな拳法であまりにもシンプルな為に門下生が飽きてしまって他の流派に鞍替えしてしまうことが多かったという。しかしその全奥義が5分で終わるものを2年間延々練習して免許皆伝になった使い手がいた。前述の廻もうんざりするような基礎のワンツーの反復練習があって試合で結果を残すというシーンもあった。先にも述べたが同じ作業や質問を繰り返すことが人間にとって最も苦痛な拷問である。しかしその一方でスポーツなどでは同じ地味で単調な動作を延々繰り返すことが実は栄光へ最も確実に近づくルートなのである。