ハンス・オフトの功績

筆者がハンス・オフトというサッカー監督に興味を持ったのは2008年のJ1の残留争いの時であった。当時、筆者が好きなジェフ千葉と他の2チーム(東京ヴェルディとジュビロ磐田)が1つの自動残留枠と1つの入れ替え戦枠を争っていた(1つは自動降格)。そして2008年J1シーズンの佳境に入った9月に当時成績不振だったジュビロが前監督を更迭して、ハンス・オフト監督を最終節までの試合と当時J1とJ2の入れ替え戦限定(約10試合)の暫定監督に就任した。
そして最終節にまずジュビロは引き分けで入れ替え戦に進む権利を得た(ジェフが自動残留、ヴェルディが自動降格)。そしてその後入れ替え戦で当時J2だったベガルタ仙台とホーム&アウェイで対戦し、オフトは当時のジュビロの無名選手を抜擢し、1勝1分で残留を果たしジュビロをJ2降格から救った。
筆者がオフトに興味を持ったのはここからで、残留という結果を残した監督をフロントもサポーターも慰留を望むのが当然である。しかしオフトは「自分(オフト)がジュビロにできることはここまでだ。後はフロントが別の監督を呼びなさい。」と言ってジュビロの監督続投を潔く断ったのである(似たような形で同様の残留をしたジェフが、次の年降格したのとは対照的である)。この時自分はハンス・オフトという監督はサッカーが何かということを知っている監督なのではと思った。
オフトは元々JSL時代にマツダ(現J1広島)の監督から日本代表の監督になった。そしてその後、浦和レッズの監督や前述のジュビロ磐田の暫定監督も歴任した。W杯アメリカ大会でドーハの悲劇を経験するも、当時アジアでは弱小であった日本代表を強豪国にした。日本代表時代には当時長崎県の無名校の高卒選手だった森保一(もりやす・はじめ、現J1広島監督)を日本代表に抜擢したり、日本代表や浦和レッズといった超人気チームなのだが成績が振るわないチームに対して、オフトは「責任の所在の明確化」(日本人が最も苦手とする分野)をそれぞれのチームに定着させて、日本代表(or浦和)をよちよち歩きの幼児からアジアの強豪チームとして戦って行けるように立派に地に足を着けて歩いて行ける成人にしつけた、日本サッカー界の育ての親のような人物なのがオフトなのだと思う。
オフトジャパンで日本代表の時は最終的に本大会出場を逃しているのでオフト自体重視されていないが、オフトは日本サッカー界のそれまで未熟だったソフトの部分に対して、責任をはっきりさせてチームの内部を成熟させていった。実はオフトという監督は凄い監督だということを最近改めて実感するようになった。