父がなくなって、11年経つ。
具合が悪くなったのは7月になってすぐで、その夏はなんとか過ごして9月初めに亡くなりました。
そのひと夏は、父が私たちとお別れをするための時間になった。
頑固な大正生まれの父。父としては怖くて、父の部屋にはあまり近づかなかったけど、古いタンスや本や、蚊取り線香の匂いがした。
孫には優しく、私が出産後に里帰りした時は、生まれたばかりの娘を可愛がってくれた。夏生まれの娘の傍ら、団扇でそっと扇いでくれる父の眼差しは、見たことないくらい優しかった。
その父を見て、私は少し親孝行したなと思ったのだ。
そんなこんなで、父の思い出は夏に多い。
蚊遣火の微かに残る父の部屋亡き父の鉄風鈴の余韻かな
凌霄花こぼれ落ちたる父の庭
一心に眠る赤子や古団扇 / すなみ