松本清張原作。しがない町印刷工場の社長(といっても妻の他従業員は一人である)は妾に産ませた三人の子を置き去りにされ途方に暮れる。妻は夫の裏切りに瞋恚の炎を子らに向け虐待するが、やがて夫にこの子らをどうにかしろと迫る。
そのうち1歳半の次男が栄養失調で衰弱死(もしくは虐待死)し、幼い長女は東京タワーの展望階に見捨てて逃げ、7歳の長男は旅行を装って海辺の街を連れ回し、やがて疲れて寝入っているわが子を断崖から海へ投げ捨てる。だが運よく途中の松の木に引っかかって奇跡的に助かったのだった。

人の親がエゴのために、わが子にここまでするかという辛い内容。その所業は畜生以下だから鬼畜なのだろう。
緒形拳演じる父親も鬼畜だが、それを暗に教唆する妻も鬼畜だ。特に妻の岩下志麻が、食べ物で無邪気に遊んでいた次男の口に飯粒を「そら食いたいんだろう、食え」詰め込むシーンは凄絶で、いくら映画撮影とはいえ今なら完全にNGだろう。
ラストシーン、警察官(若い頃の大竹しのぶ)たちが「この人お父さんだよね」と確認を繰り返すのだが、長男は涙ながらに「知らないおじさんだい」と強く否定する。これには父に対する訣別とも庇おうとする態度とも取れるダブルミーニングが含まれていると思われた。